弱虫ブラザーがカツアゲされたエアジョーダン1をギャングスタから取り戻すために奮起する話、、と言うと軽い感じがするけれど、意外に苦くて重みもある青春映画の新たなマスターピース。
もちろん1人の少年の成長譚、ジュブナイルもの、ビルディングスロマンとして途轍もなくフレッシュなんだけれど、ヒップホップや延いてはアメリカという国が根底に抱えてる過剰なマチズモやコンペティション体質に対する批判精神も根底に流れており、主人公とは逆側の視点を持ち込んでいる点からして本当にスマートで物語に厚みもある。
この作品自体が1枚のヒップホップのコンセプトアルバムの様に感じてくる引用やオマージュ、構成のリズムも最高です。
チャールズブラッドリーの"In you (I found a love)"が掛かった時にイヤッホゥと奇声を上げそうになった。カッコ良すぎて。
ベイエリアの荒涼とした風景に一瞬輝く美しい風景を切り取る撮影も見事。フィルモグラフィー見たら「スイスアーミーマン」でも良い仕事してた方！要チェックや。
「ムーンライト」フアンのダークサイドの様なマハーシャラ・アリはもちろんクール。タイプキャストの様だけれど、ムーンライトと同じ頃の製作なんですよね。
少年たちもみんな良かった。ビギーの息子さん俳優なんだなー。
あと大筋とは関係ないけれど、憧れの"キックス"を履いてなんだか自分が大きくなったというか謎の無敵感にひとり高揚して学校とか路上をウキウキ歩くブランドンとか、悪ガキ3人の微妙な距離感の描き方とか静かな演出も本当に味わいがある。
こういう繊細なところに共感出来るからこそ、遠い日本に住む僕らもベイエリアの少年たちに感情移入出来る訳だし、映画の力だよなぁ、と。
