ゆめちん

キックスのゆめちんのレビュー・感想・評価

キックス(2016年製作の映画)
3.0
キックス

黒人文化における若者のスラングでスニーカーを "キックス(Kicks)"と呼ぶそうです。

舞台はカリフォルニア州リッチモンド。貧乏で背が低く女の子にモテないブランドンは、スニーカーさえあれば現実から逃れられると、お金を貯めて"エア ジョーダン 1" を手に入れますが、すぐに地元のチンピラ フラコに奪われてしまいます。

まずヒップホップサウンドが多く流れるのが本作品の魅力のひとつ。心情に合わせ緻密に考えられた構成が見事でした。

登場人物がすべて黒人で、日常に当たり前に存在する暴力や略奪そして発砲、赤ん坊の横には銃が平然と置かれ、ブランドンが生きる黒人社会の厳しい現実が如実に描かれ、終始居場所がないような感覚をこれでもかと味わいます。

そんな中、ブランドンと二人の友人アルバートとリコとの明るいやりとりが、作品全体の重苦しい雰囲気をちょっとだけ和らげ、温かみのあるシーンになっています。

そして"ムーンライト"の役柄を彷彿させる、マハーシャラ・アリ演じるマーロンの発する言葉1つ1つが重厚で、圧倒的な存在感が際立ち、迫力のある演技は見応え十分でした。

本作品は"ブランドンが大人へと成長する過程"をスニーカーを通じて描きますが、その過程には暴力やドラック、そして拳銃が切り離せないでつきまとい、挙げ句の果てには死人まで出てしまう、そんな彼等流の成長は苦々しくて手放しでは喜べず、いろいろと考えさせられるものがありました。
それでも彼等は成長し、生き抜かなければならないという現実がなんとも残酷でたまりません。