エクストリームマン

13th 憲法修正第13条のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)
3.8
アメリカ社会の構造的搾取を暴くドキュメンタリー。

“合法的”で周到なシステムによってアフリカン・アメリカン(をはじめとした有色人種)を奴隷化する過程が具に示されている。奴隷制度とは即ち経済の問題であり、変転しながら継続する奴隷制度もまた経済の問題である。タイトルになっている13thは奴隷を禁止するアメリカ合衆国憲法13条の但し書き「ただし、犯罪者は除く」を現している。奴隷が憲法で禁止されるのなら、奴隷にしたい人間を先ず犯罪者にしてから奴隷にすればいい…という合理的で合法的な解釈は、南北戦争後の奴隷解放直後から既に行われている「伝統的」な手法であり、近年は刑務所の民営化・メディアスクラム・大統領選の選挙戦略が生み出した巨大で歪なキメラとして加速度的な成長を見せた“一大産業”なのだ。

はちきれんばかりに人を詰め込んでおきたい民間の刑務所とその周辺産業、犯罪の危険を煽り続けて視聴率を稼ぐテレビ・メディア、人心の堕落と退廃という「国家の危機」を演出し、強い態度と姿勢で票を稼ぎたい大統領候補たち。。。彼らの巧みな連携プレーによって、1970年代までは30万人だった収監者は2000年代に200万人を超える。犯罪発生率は下がっているのに。一度犯罪歴がつけば、社会の階段を再び登ることは許されず、合法的な排除によって社会から追いやられた人は何度でも刑務所へ。その全ての過程が「儲かるように」作られている。圧倒的で構造的な搾取によって成り立っている経済の範囲は極めて広く、社会全体に深く根付かされていて、そのことに気がつくことさえも容易ではないし、気がついてもすぐに変えることは難しい。そして、ターゲットとされる人々の諦めや絶望と、ターゲットにされていない人々の「私は無関係でよかった」という安堵と無視によって今日でも尚この怪物は圧倒的な権勢を誇っているのだ。