シズヲ

日本人の勲章のシズヲのレビュー・感想・評価

日本人の勲章(1955年製作の映画)
3.7
第二次大戦終結から間もないアメリカ西部にて、とある辺境の町を訪れた“よそ者”を巡る物語。荒野を跨ぐ列車、アメリカ西部の寂れた町、コミュニティーの外部から現れる流れ者、箱庭的な舞台で繰り広げられるストーリーなど、殆ど西部劇の文脈で描かれる。監督は後に『OK牧場の決斗』や『荒野の七人』を撮るジョン・スタージェス、役者もウォルター・ブレナンやアーネスト・ボーグナインなどを揃えていて、絶妙なまでに西部劇めいた人選で固めているのが憎めない。名優や名脇役で構成された役者陣の演技は安定して見ていられる。

原題とは全然関係のない邦題は作中における核心的な要素を示していて、大戦前後の日系米国人の立ち位置が垣間見えてくるのが印象的。日系人そのものは作中に出てこないとはいえ、題材も含めて一種の社会派ドラマめいた趣がある。オールド・ウエストの町という如何にもアメリカを感じさせる舞台を背景に、そこに住まう“アメリカ的”な保守系米国人の内面に根付く差別意識・排他性を浮き彫りにしている。町全体を覆う閉鎖性、そしてヒリついた緊張感を演出するリー・マーヴィンらの佇まいが実に良い。彼らとスペンサー・トレイシーが対峙し、徐々に町の秘密や“よそ者”の素性が明かされていく展開からは(見ていて予想はできるものの)ノワールめいたサスペンス性も感じられる。

80分程度の短い尺による簡潔さに加え、ジャンルを混合させたような作風と変わり種の題材を扱った内容は中々に興味深くて面白い。しかしリー・マーヴィンにアーネスト・ボーグナインにロバート・ライアンって顔触れ、もしかしたら『ワイルドバンチ』で見れたかもしれない並びなのだなあ。
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