もやし

ロニートとエスティ 彼女たちの選択のもやしのレビュー・感想・評価

4.8
レイチェルワイズとレイチェルマクアダムスの百合、という最低レベルに下世話な理由でチェックしてたやつ。
宗教が絡み合ってるのもあって、愛について深すぎる後味があるとても響く作品。


神は6日間で天使と獣を作った。そして7日目の夕方にサクッと人間を作った。それは何故なのか。人間は何らかのものをもたらすものなのか。そして我々の苦悩は、一体何のためのものなのか。


厳格なユダヤ教徒に生まれた二人だが、レイチェルワイズは耐えられず町を出た。
それから十数年。ラビである父の訃報を受け、町に戻る。
そこにはかつて愛し合っていたが結婚しているレイチェルマクアダムスの姿が。


レズビアンということで父から実質勘当されていたワイズの、父への複雑な愛情が、何とも辛い。
この映画で描かれる愛は、どれもとても深い。俺こんな深い愛情を抱いたことないかも…



かつて愛し合ってた二人の描写は結構夢中で見入ってしまった。
もう私達はとっくに終わってるのよ的再会からの、それでもお互い核心に触れたい、触れざるを得ない、この心の揺れ動きが苦しい。

何てことない顔してるけど、距離ができてから今までどれほど苦しみ抜いたか、(もはや病むレベルの)そしてそれから何度あなたのことを思い出していたか、思い浮かべていたか。
そしてまたあなたと関係を気付きたい、ならそうしましょう、これ以上は駄目なの、じゃあやっぱり距離を取るしかないよね、それは嫌だずっと一緒にいたい、という答えの出るはずのない終わることのない問答。状況だけがどんどん苦しくなっていく。


それについて苦しみが伝わってくるところはかなりあったけど、正直旦那さんめっちゃ可哀想なのは確か…
とても思慮深い偉大な人なんだけど、こんな状況に置かれたら、耐えられる人なんているんだろうか。試されるにも程がある。
やっぱり監督は宗教を否定したい意図があったのかな。あったんだよね。これだけ教えに背かざるを得ない状況に登場人物を置いて苦しませるなんて。

でもこれほど強大な代償を経てまで「自由」を得ることを大事に思うかっていうのは人によって意見が割れると思うから(ある程度縛られた決められた社会を良しとする人もいると思うから)、この映画の感想も丸っきり変わってくるのかな。
でも愛し合うのさえ許されないのはおかしいって誰もが思うよね。


少なくとも俺は見てて、こんなに沢山のものを背負ってまで通したい愛なんてあるのかなって疑問だった。
人の感情ってすぐ変わるものだし、何でこんな辛い思いしてまでこんな不確かなものを追えるのかなって。
でも、諦めたらたぶんこの映画って自殺者出るレベルだし、もうこれから不幸になろうが後悔しようが、それでもこのときはこうするしかなかった、なのかな。
そういう意味でも描こうとしてる愛がすごいなと思いました。

何でこんな苦しみが世に存在してるんだ!っていう憤りの方が個人的には大きかったけどね。(フィクションだけどね!)
もやし

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