竜平

ロニートとエスティ 彼女たちの選択の竜平のレビュー・感想・評価

4.0
厳格なユダヤコミュニティのもとで生まれ育った女性が父の死をキッカケにその故郷へと帰ってくる。そこに待つ幼馴染みとの再会、そして忘れ得ぬ思い出。同性愛と信仰を題材に贈るラブロマンス映画。

個人的なことから言えばレイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムス、主演のこの二人見たさで鑑賞。それだけでもうすでに大満足だったりするんだけど、それだけにとどまらず、なんとも味わい深い内容になってると思う。故郷を離れたロニートと故郷に残ったエスティ、二人の記憶が久しぶりの再会によって交差していく。会話などから少し想像力を働かせる必要がある点、また宗教絡みの人間模様を描くあたりも含めて、若干玄人向けの作品と言えるのかも。まず故郷というものの存在、ここらへんは地元を離れた身としてなんだか共感できるところがあったり。上手くは説明できないんだけども、縛られたくない気持ちとか自由を求める気持ちとか、登場人物が若い頃に抱えてたであろうモヤモヤみたいなのをビシバシと感じてしまう。そこに掛かってくるのが宗教的な問題、“しきたり”や多数派による軽蔑、物事の決まった流れ、それ故の人物たちの葛藤や、自分なりの答えを見出そうとする様が印象的。ロニートとエスティの幼馴染みの男ドヴィッドの存在も非常にいいスパイスになってたりする。いろいろを経ての終盤の展開が素敵だなと。ちなみに原題の意味は「不服従」、ということでその終盤もユダヤ教の訓えというのをまったく知らない身としては幸せな傾向に見えるけども、違う視点から見ればあまりいいものではないのかもしれない。まぁとりあえず諸々“察して”見れるところと、シンプルにラブストーリーやヒューマンドラマとして楽しめるところと両方あると思う。更に邦題にある「彼女たちの選択」という言葉でよりわかりやすくなってるというか取っ付きやすくなってる気がする、これは日本人にとってはナイスだなと。本当の意味でグッとくるのは難しいのかもしれないけど、ひとつの作品としてのまとまり方とか含め、なんとも美しい一本。なかなか好き。

いやしかし、演じる二人の美しい容姿はもちろん、表情やら何やらで関係が次第に見えてくる展開にも見惚れてしまうこと請け合い。官能的なラブシーンなんかもしばしば。ここらへんは『キャロル』あたりにもあるそれなんだけども、純粋で素敵なシーンをちょいスケベな心で見ちゃうのは本当ごめんって感じ。
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