Emma

オードリーとデイジーのEmmaのレビュー・感想・評価

オードリーとデイジー(2016年製作の映画)
4.0
Netflixオリジナルドキュメンタリー。

性的暴行の被害に遭った10代の少女たちの足跡を追うかなり骨太なドキュメンタリー。アニメーションと匿名編集で加害者の少年二人も出演しています。

ちなみに彼らの出演は被害者家族との和解条件の1つに提示されていたからということ。でもこの結果、彼らがしたことは世界中に知られることになりますね。

ドキュメンタリーではオードリーと、デイジーという二人の被害者の女の子たちにスポットがあたります。

悲しいことに、オードリーは被害を受けた様子をネットにも拡散されてしまいそれを苦にして自ら命を絶ってしまいます。

デイジーもまた、何度も死を選ぼうとしたものの生きていくことを決意します。ただ、その道のりでは何故被害者の彼女や彼女の家族が?と思わずにはいられない理不尽極まりない酷い仕打ちが待ち受けています。

小さい町、加害者の家族が地元では有名な家柄、といったいかにもな政治的な背景が絡んで、一部の人たちからは被害者である彼女に非があるかのような中傷の言葉がSNS上に書き込まれます。しまいには家を壊されたり燃やされたり。兄も学校で手のひら返しされて孤立したり。ありえないです、なんで?と心が痛くなります。

日本でも同じようなことを起きてると思います。性暴力の被害者の女性たちが勇気を出して顔を出して取材に応じた記事に2チャンネルで侮辱の言葉が書き込まれる。世界どこに行ってもクズはいるようです。

保安官が劇中で、男がいつも悪者扱いされる、といった趣旨のコメントでインタビュアーをちょっと唖然とさせてるような空気が画面越しに伝わって来たけど、こういう人が保安官って時点で被害者は絶望だと思う。

最後のシーンでは命を絶ってしまったオードリーと、なんとか苦難を乗り越えようとしたデイジー、それぞれの卒業式の様子が映し出されます。

オードリーの姿がそこにないことに、非常に無情ではあるけれども、やはり命を絶っても残された人たちの人生は続いていくんだという無常感を感じずにはいられなかった。

性暴力事件は過去最多になっていると最後テロップが出た。一人のケースをこうしてドキュメンタリーでじっくり聴くだけでも胸の悪くなるような虫酸の走る事件なのに、そんな思いをしている被害者やその家族がこの世界に一体何人いるんだ、誰にも言えずに苦しんでいる人が何人いるんだと思うと、絶望と怒りしか湧きません。

ただ、デイジーやデイジーの兄のように辛い苦しい道のりからも決して逃げずに生きていく人たちの姿にとても感銘を受けました。とくにデイジーの兄が、自分の妹が同級生らにされた仕打ちを踏まえて、監督する少年野球の男の子たちに女の子をどのように扱うべきなのか諭したというエピソード、素晴らしい人だなと心が熱くなりました。
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