たいてぃー

光のたいてぃーのレビュー・感想・評価

(2016年製作の映画)
3.8
三浦しをんの小説は、これまで読んだことはないが、映画になったのは、鑑賞している。「風が強く吹いている」「舟を編む」「wood job!」そして本作と同じ監督作の「まほろ駅前」シリーズ。これらは友情や人情ものって、記憶しているけど、本作は予告を観る限りは、イヤミスか過激なサスペンス?大森監督だし、何かあるはずって期待で鑑賞。
出だしから、静寂と映像美そして突如鳴り出すテクノミュージック。暴力が多く描写されるし、それに見合う音楽って言えば、その通りだけど。脳内のドーパミンが突如 大量に分泌される感覚に陥った。(おおげさだよ)
映像美は美浜島の森の深緑、椿の赤、月夜のモノトーン。これらがストーリーに絡んでくる。こんな突飛な発想と暗く重たいストーリーの組み合わせは大森監督の意欲作で間違いない。
でも、何故か評価が低い。原作との違いがあったんだろうか?気になって、原作を読んでみた。
(以降はネタバレ含みです。)
原作は映画より相当エグい。映画でもそう言ったシーンはあったが、原作はもっと表現が過激。これを映像化するのは、無理があったのか。原作では津波があってその後に殺人となる。津波が先だと、どうしても被災の惨劇を描く必要がある。でも描くべきは人間の惨劇ってことで、これを割愛できる筋にしたのだろうか。
前半で、最も印象に残るのは、美花の「た・す・け・て」という、発声したかよくわからない、つぶやき。これが殺人のトリガーとなる。この少女期の美花役に紅甘。このときの表情が何ともエロティック。内田春菊の娘とのこと。内田出演の快作(怪作)「ビジターQ」を思い出した。
あと、瑛太演じる輔の恋人役と言うか性のはけ口役で原作では野村結子が登場するが、映画では出て来ない。他の人物とは違い凡庸さがあって、比較という意味では、必要と思われるが。信之の妻、南海子と遭遇する描写が秀逸。それと、輔は殺人の証拠品を結子に託すのだが、映画ではさほど仲がいいとも思えない同僚に託す。この筋書きは無理があると思うが。
ラストシーンも殺害現場に木が成長して、そこに光が当たるで締めくくっているが、何か取って付けた感がある。原作では、美浜島は白い光に包まれるって件でラストを迎えている。
役者では、主演二人がこんな難役を熱演。狂気をはらみ、その内面には純真さがあるって役を、井浦新は冷淡さを交え、瑛太は奔放さを交え演じきる。それと南海子役の橋本マナミ。ラストの全てを知って、それでも夫を迎え入れるってシーンでの会話、表情がいい。前半の輔のアパートで、輔を送り出す時の裸の後ろ姿が強烈にエロい。
そして、輔の父親役の平田満。暴力シーンが過剰気味。やってるほうが疲れちゃうんじゃないかと。あと、死んだ時の尻が妙に肌つやがいい。何か意味があるのか?未だに疑問。