やま

女の中にいる他人のやまのレビュー・感想・評価

女の中にいる他人(1966年製作の映画)
4.2
成瀬巳喜男監督作品を映画館で初めて観た。
またしても傑作。


予兆と連想の繰り返し映画と言えばよいのか。
冴えない中年男の親友の嫁が殺された。
犯人は誰なのか?というのではなく、犯人の心の葛藤を描いた作品。
ちなみに犯人はわりと冒頭に主人公だとわかる。
風船(癇癪持ちの息子)、おもちゃの車、ドラマの1シーン、橋、同僚だとか様々なシーンが事件に関連する出来事を連想させてくる。
事件の真相がわかると、犯人の心を狂わせてくる描写が増える。何気ない息子の一言が一番嫌な予感をさせてくる。


照明も面白い。
「実は話さなければいけないことがある」みたいなセリフが何度かあるのだけど、その場面は全部面白い。奥さんの顔は怖すぎる。雷が落ちて、奥さんが手に持つロウソク1本で部屋を照らす。奥さんの顔も照らされている。
親友との場面の後ろで狂ったように踊ってる若者たちとの対比も面白い。

1カット1カットしっかりみせようとする意思があるように思えた。それにより微妙な繋がりとかあるように思えたし、テンポが悪いようにも思える。
けれどもしっかりと見せられるからこそ、1つ1つのカットの意味が伝わるようにも思えた。
もちろん奥さんの顔がいきなりアップになるとか、冒頭のタバコの連続とか面白い繋がりはある。

ラストは当たり前。
ああなって当然なのである。
やま

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