神戸典

不能犯の神戸典のレビュー・感想・評価

不能犯(2018年製作の映画)
3.0
まず、松坂桃李以外の役者の演技がとにかく軽く、深刻さが伝わってこない。
これほどまでに顕著に呆れる演技は初めて見た。
そのこともあり、松坂桃李の演技だけが突出していた。
彼の役がたった1人でこの作品を支えている。

沢尻エリカ演じる多田に関しては最後まで憎しみや力で相手を沈めることをしてこなかったのだが、最後の最後で松坂桃李演じる男をいともたやすくナイフで刺している。
この行為は正しい方法で償わせる為なら悪にも染まるという強い意志と捉えるかもしれないが、自らがただひたすらに言ってきた希望を信じるという言葉に反しており、最後の闇に対しての対立的な希望としてあまりにも説得力がなく心に響かない。

最後は再び電話男への依頼が貼ってあるシーンにすることで、どんなに希望を持ってもどうしようもないほどに人の恨みや妬みは無くなることはないと伝えている。
しかし、それを言い放ったのちにその感情は本当に自分自身で肯定できることか?と問い、一度考えることを脅迫にも似た圧力で観客を静まらせようとしているように感じた。

作品としてはイマイチだったが、設定が実際にありえそうで過剰な能力ではないところがリアルなつくりとなっている。
神戸典

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