背骨

先生! 、、、好きになってもいいですか?の背骨のレビュー・感想・評価

4.0
広瀬すずに「好きになってもいい?」と聞かれたら、彼女が言い終わる前に「好きです!」とこちらから言ってしまって話が一気に次の段階に進んでしまうに違いないけど、キチンとした漫画の原作がある映画化なので、島田響(広瀬すず)と高校の社会科教師 伊藤貢作(生田斗真)の約2年間をじっくり113分かけて描きます。

「女子高生が先生を好きになって卒業するまでの2年間」もちろんその過程ではさまざまなことが起きるけど、基本的にはそれ以外の要素は入ってこない。

そして、ストーリー展開としてもすべてが順を追って、観客の予想通りに進んでいく。そしてラストも捻らず予想通り仕上げつつ、しっかりと観客にカタルシスを感じさせる。

観客側の予想通りに作っていくことはある意味で凄く怖いことだし、逃げが効かない。そこを変に捻ったり、他の要素を入れ込んできたりしない、そういう真っ向勝負で誠実な作り方が、この映画の評価されるべきところであり、数々の青春恋愛ものを撮ってきた三木孝浩監督の凄さだと思う。

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「はじめて好きになった人が先生だった」
ここから始まるストーリーの中で、「初恋の戸惑い」「純粋に人を好きになることの素晴らしさ」「人を想う事で成長していける事」「子供の純粋さと身勝手さ」「大人になるにしたがって身についてしまう処世術と狡さ」「モラルと感情の狭間で揺れ動く心情」などが描かれる。

「先生、好きになってもいい?」
これは劇中、響が先生に向かって言うセリフなんだけど、ある意味、観客にも問いかけてるんじゃないかな?と思った。

「貴方は先生を好きになるってことをどう思う?そういう事に関して何を考えますか?」って。

社会の中で生きている以上、純粋に思った通り生きられる人はいないし、だからといって完全に感情を押し殺してルールに従って生きていく事も出来ない。

人間とは素直な感情と、モラルや立場の狭間で揺れながら生きていく事を避けられない儚い存在なんだなって、そんな事を考えた。

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キャストの中で特に良かったのは、主演の2人以外では、森川葵と比嘉愛未。

森川葵は響の親友 千草恵役として、物語の推進役として素晴らしい道化ぶりだったし、比嘉愛未は生田斗真以外では唯一、人物像が見えてくる大人、美術教師 中島先生役として要所要所で“感情が見え隠れするセリフ”や“メッセージ性を含んだセリフ”を任され、効果的に機能していた。

もちろん、この映画で最も重要なキャストである広瀬すずと生田斗真も素晴らしい。2人のシーンは常にとんでもなく濃厚な恋愛濃度だった。
先程から言っているようにストーリー展開としては、なんのギミックもない映画なので、実力あるこの2人だからこそ、この映画は成り立ったのだと思う。

広瀬すずは『怒り』『ちはやふる』『三度目の殺人』でも素晴らしかったけど、この映画での響役をキャリアの中でのベストアクトに推す声が上がってもおかしくないレベル。

自分はこの映画で広瀬すずは日本を代表するトップクラスの女優であると確信した。演技力は年齢やキャリアとは関係ないという事も。
その黒目の動き、僅かな唇の動き、微かに震える声でこれだけのものを表現出来る女優はなかなかいないと思う。

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主題歌である スピッツ「歌ウサギ」
もともと好きな曲だったけど、映画を観終わってからエンディングで流れてきた時、今まで感じていた以上のものを感じた。
自分が観た映画の中で今年最高のエンドロールだったかもしれない。

この映画のために書き下ろした曲らしく、まさにこの映画の世界を歌ってるような歌詞が凄い。さすが天才作詞家 草野マサムネ♪と唸ってしまった。
https://youtu.be/7KKn4C9786k

今年の最優秀主題歌賞決定かな?
(というかそんな賞あるのか?笑)
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