えんさん

I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザーのえんさんのレビュー・感想・評価

3.5

映画史上に残る世界的大ヒットSF映画「スター・ウォーズ」シリーズのエピソード4~6で絶大な人気を誇る悪役ダース・ベイダーのスーツアクターを務めた、俳優デヴィッド・プラウズ。しかし彼は、シリーズの生みの親ジョージ・ルーカスとの間でトラブルが重なり、初期シリーズの最終章エピソード6では大幅に出演シーンを減らされ、あの有名な親子の対面シーンは別俳優で撮影されてしまう。それをきっかけに、今でも彼は「スター・ウォーズ」公式ファンイベントへの出入りは禁じられている。当時一体、両者の間で何があったのか?その真実を明らかにするため、ダース・ベイダーを深くリスペクトする映像クリエイターが、当時のスタッフ、キャストに取材を敢行する。そして、もう一度、史上最も有名な悪役として、あの名シーンを演じて欲しいとデヴィッド・プラウズへの説得を試みるのだが。。「スター・ウォーズ」シリーズでダース・ベイダーのスーツアクターを務めたデヴィッド・プラウズの真実に迫るドキュメンタリー。監督は自身も出演しているトニ・ベスタルドとマルコス・カボタ。

僕自身がスター・ウォーズにどれだけリスペクトしているかということは、スター・ウォーズ関連作品の感想文でいくつか触れてきたと思いますが、ファンにとっては有名な台詞「私がお前の父親だ(I AM YOUR FATHER)」という言葉がつけられた本作は、そうしたスター・ウォーズ伝説の中での隠れた歴史をあぶり出しているドキュメンタリーといえるかもしれません。ダース・ベイダーといえば、主役のルーク・スカイウォーカーよりも有名で、彼だけでもシリーズを代表するキャラクターとして、今でも様々なシーンで登場してくるくらいです。もちろん、あの風貌ですから彼の素顔はさらされていないんですが、スーツ・アクターとして彼の一挙手一投足を演じたプラウズは、スター・ウォーズファンでは知らない人はいないほど影のキャラクターとして有名な存在です。僕がいいなーと思うのは、エピソード4の冒頭にレイア姫を捉えるために宇宙船に乗り込んでくるシーンや、遅れているデス・スターの建設に対し提督を締め上げるところ(これは本作でも取り上げられていますが)、エピソード5での有名な父親だと告白していくシーンの恐ろしさの中にも漂わせる哀愁さみたいなものは、やはり顔は見えなくても、ベイダー卿はプラウズの役柄(それはR2-D2やC3PO、チューパッカなどのスーツアクターも一緒なんですけどね)といえるかもしれません。

しかし、確執が起きたのはエピソード6での製作作業のとき。ファンなら、最後の最後にベイダーがマスクを取り、ルークと会話をする有名なシーンがあることが分かるし、プラウズの顔を知ると、あれが彼ではないことは一目瞭然でしょう。その裏側で行った出来事を紐解いていくわけですが、そこで何があったのかは映画を見ていただくとして、、重要なのは、こうした負の一面(S.W.的に言えば、ダークサイドストーリー)ながらも、プラウズ自身が今でも謙虚にスター・ウォーズ・レジェンドを支える一員としてファンの期待に応えているということ。その真っ正直さがルーカスとの衝突を産んだ原因でもあるわけですが、そうした出来事が起きた後でも、彼は彼であり続けたことがダース・ベイダーという1つの突出したいるキャラクターを生み、今でも愛されている由縁だと思います。

ただ、こうした一面を有名なあのシーンをプライズを使って再現するという試みが、彼の隠されていた自尊心を揺り動かすわけになるわけですが、それがいいのか悪いのかは好き嫌いが分かれるところかなと思います。スター・ウォーズの爆発的なヒットはルーカスからディズニーに受け継がれ、それが今後も続いていくわけですが、今でも公式にはプライズを否定し続けるルーカス(もしくはディズニー?)側の対応が、レジェンドの1つの傷に見えなくもありません。