ちろる

娘よのちろるのレビュー・感想・評価

娘よ(2014年製作の映画)
3.8
娘よ、願わくば誰にも支配されないでほしい。
娘よ、自分だけの想いを貫いて人生を突き進んでほしい。
娘よ、愛する人に出会って幸せな女性になってほしい。

母親が娘に想うごく当たり前の願い。
これのどこに罪があるのか?
なにが間違っているのだろうか?
物語の始まりに見せる母と娘の愛おしい、そして美しい時間は断絶され、未だ一部のイスラム圏で行われる未成年に対する強制結婚の悲劇を描く本作。
逃亡劇を描くサスペンスを軸にしながら微かなロマンスを織り混ぜて、危機迫ったロードムービーとして仕上がっている。

ロリコンの部族長、そして少女の父とその弟もそれぞれに想いをかかえ、単なる悪と善に分かれて描かれるわけではなく、ロリコン部族長じいさん以外については、文化さえ違えばなんらそこらへんにいる普通の人生を送る男だったのかもしれない。
しかし、一番大事なものが地位と名誉とプライドであり、なんの後ろめたさもなく名誉殺人を強行する想いに到るこのパキスタンの山岳地帯の閉鎖された文化が本当に恐ろしかった。
ご都合主義な部分もあるかもしれないが、救いのなさすぎる展開の唯一の光となる元ムジャヒディンのトラック男がこの物語にいてくれて良かった。
この可愛らしい少女に、母以外にも心から愛してくれるおばあちゃん、そしてトラックおじちゃんがいてくれて良かった。

どうか、この少女が母の人生を賭けた願いを叶えることができますように。
ちろる

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