emily

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー/純愛日記のemilyのレビュー・感想・評価

3.8
15歳の少年ペールは祖母のお見舞いで14歳のアニカに一目ぼれ。お互い気になる存在だけど、なかなか恥ずかしくて話しかけられない。二人のみずみずしい純愛を思春期ならではの葛藤や大人への反発を交えながら描く。夏の終わりペールの別荘を訪れるアニカ。家族が大集合し確かな愛を確かめるのだが。

思春期の純愛物語といえばそうなのだが、対比するように大人たちの孤独や心の闇が描かれている。冒頭からお見舞いに行った祖父が退院したくないと涙ながらにいう。孤独な者にとって外の世界に幸せはないという。同様にアニカの叔母のエヴァは結婚もしておらず夢も叶わなかった喪失感漂う自分の人生をアニカに語るのだ。アニカの両親も喧嘩が絶えず、見た目や地位名声、お金、目に見えるものにこだわる大人たちが渦巻く中で、二人の目に見えない純愛はどんどんと確かな物になっていく。特にペールが自分の弱い部分をアニカに見られてしまったのが大きい。そんな彼をさらに許し心を通わせていく二人の心の交わりは、大人たちの切ない現実の中でより一層輝く。

常にのぞき見しているようなカメラワークにより、観客にも問うのだ。本当に大事なものは何なのか?二人の純愛を窓越しに、木陰からのぞき見し、時には壮大な夕景の中赤いネオンや、赤い電車を見送りながら、目に見えるものにこだわってる自分を思う。集大成のペールの別荘でのザリガニパーティ。地位や名声にこだわる親が嫌で、反発していた思春期を思い出す。しかし同じ大人になっていないか?大事なものは片手に収まるほどのもの。そうして大事なものこそ目に見えず、心が感じる感情であること。そうしてそれはどんな環境かでも色あせないこと。フェンス越しに見た二人のキスシーンが何より美しく、そこに自分の青春時代のそれが重なる。忘れてはいけない物をそこに見るのだ。
emily

emily