カラン

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー/純愛日記のカランのレビュー・感想・評価

4.0
物語の5分の3は幼い恋人たちの距離に捧げられる。アニカという13才の少女と、ペールという15才の少年の恋の距離感。恋は距離がなければ成立しないのだが、それを視線と横顔で表現。こっちを見ては目をそらす。そしていつものように頬やうなじが画面に映り、想いだけが募っていくが、今にも終わってしまいそう。また、少年は原付に乗るのだが、少女に向かう時にはいったん少女の視界から消えて、もう一度2人を繋げている道の地平線に現れては近づいてくるエピソードを3回ほど反復。出逢えないのかもしれないという不安が必ず伴う、恋の距離感。

少年が少女の視界から消えても少女が心配そうな表情をしなくなり、2人の距離が詰まる頃には、主題は少年少女の距離感から、大人たちの哀れで痛ましい距離感に切り変わる。これは、最初の療養所での場面で少年と少女の眼差しの探り合いが行われている背景で、ペールの爺さんらしき人物が「この世は孤独な人間に合わせてできていない。」と涙を流しながら、誰の共感も得られない話を怒鳴りながらしていた時から、決まっていたのかもしれない。しかし、アニカのお父さんのヨンのインパクトが強過ぎて、全部持っていかれる。

光に透けたブロンドと萌える緑のコントラスト。夕焼けもグレーがかったものから、暗い中にオレンジが煌めくものまで、様々見せてくれて、満足。ライダースを着た若い2人も可愛い。2回使われる音楽があるのだが、ちょっとそぐわない気がした。カメオ出演かと言う程度だが、ビョルン・アンドレセンがでてくる。『ベニスに死す』のあの美少年。ペール役は彼に任せた方がよかったのではないかとも最初は思ったのだが、しばらく観てるうちに、これで良かったのかと思えてくるのは、監督の力なのか。
カラン

カラン