薔薇

光の薔薇のレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
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聴覚障害用の映画音声システムの仕事に就いた美佐子と視力がなくなる寸前のカメラマンの物語。

河瀬直美監督の作品は『あん』のみ見た事があった。原作無しの河瀬直美オリジナル脚本としては初。

興味深かったのが”音声ガイド”の制作過程がしっかりと描かれている事。実際の映画館にもポッドキャストとして存在するガイドだが、脚本に沿って造られるだけではなく”創造性”も求められる物である事が分かった。

この作品は、その創造性しかり”想像力”についての映画だった。河瀬監督の風景の切り取り方や視力を失っていくカメラマンのリアルな描き方、彼の目線のカットの恐ろしさ。そして何と言っても”光”。普段の景色に思考性をつけるような撮り方。

“イメージ”を主に置いた映画で、子供の頃失踪した美佐子の父、雅哉が失う視力など喪失のイメージが沢山出てくる。
想像した事あるんですか?と監督に挑発されている気さえしてくる。さらには映画そのものも、劇中の大切な場面。写真、映画と、イメージの発達が生み出した産物が重要なテーマになっていた。

理屈の物語ではなく、想像力が試される豊かな映画。水崎綾水と永瀬正敏の2人が素晴らしすぎる。人に対しての想像力が希薄すぎる現代に対して、河瀬監督の挑戦的な願いが見える作品だった。
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