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光のminamiのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.9
以前から気になっていた作品でしたが、カンヌで約10分ものスタンディングオベーションを受け、主演の永瀬正敏さんが号泣されたとニュースで知り観ようと決めました。
どれほどこの役に魂を込めたのか見たくなったから。

河瀬直美監督作品は初めて観ましたが、某番組で有村昆さんがこの作品を取り上げていて、河瀬監督がほぼ順撮りで撮影すること。撮影時はスタートを言わずいつの間にかカメラを回して撮るスタイルだということ。事前に俳優を撮影現場であるアパートなどで生活させ役を積んでいく経験をさせてくれることなどを知り、ますます興味がわきました。

人気俳優がこれでもかと出演しているエンタメ作品や、原作の実写化等、話題性のある作品も魅力的ですが、
オリジナル作品で、ごく少人数の実力派の俳優がじっくり作り上げるこういう作品もとても見ごたえがあると思います。
永瀬正敏さんも素晴らしかったですが、美佐子を演じた水崎綾女さんもとても力強く素直なお芝居をされる魅力的な女優さんでした。

視覚障碍者のための音声ガイダンスという、普段あまりなじみのないものが取り上げてられていて、きっと観ている人の多数は見えない人が映像を見るとはどういうことなのか、鑑賞中1度は目を閉じて想像力を働かせてみると思います。同時に聴覚を研ぎ澄ませてみる。
何が必要な情報なのか、どんなことが不要なおせっかいになってしまうのか、見える見えないに関わらず、他人の立場に立ってみるというのはとても難しいことだと改めて思いました。
製作者の意図なのか自分の感覚なのか分からないけれど、町の音や風や木の音、音楽以外のいろんな音が聞こえてくる作品でした。

感動させようとして差し込まれているシーンはごく少ないように思いました。
少しは見えていた視覚をも失っていく主人公の映像を通して伝わってくる恐怖や不安。カメラマンという大切な仕事や誇りをも失くしていくことになるであろう悲しみ。
美佐子が抱えている家族との問題など、ドキュメンタリーのように映し出されるシーンの数々には自然に涙が流れていました。

大きな希望はないかもしれないけれど、ラストに向けて少しずつ光が差し込んでくるような温かい作品。
ラブストーリーというよりは、ヒューマンドラマという認識で観ましたが、このポスター(ジャケット)は数ある映画の中でもとくに素敵だなぁと思います。

設定·主題★★★
物語·脚本★★★★
映像·演出★★★★
配役·演技★★★★
音楽 ★★★
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