享楽

光の享楽のレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.6
鑑賞中涙は流れなかったものの実直に感動できて、心が動かされたところはある。前半部は映画というよりテレビのドキュメンタリー番組的な真剣さ/切実さがありますよね。これ、劇中劇の良さがよく反映されているなーと感心したところで、実際に目の見える私達も目を瞑って盲目の彼彼女らに没入したくなる、少なくとも僕は目を瞑りました。さてこの話の流れから徐々に雅哉と美佐子の孤独な実生活から彼ら2人を結び付け、最終的に雅哉の心臓部でもあるカメラを彼自身が棄てた後のキスシーン。久しぶりにヒューマンドラマという現象でグッときた。これはいい恋愛だなぁと。それから中盤部の雅哉と美佐子が映画のナレーションの想像力を巡って見解を異にする口論がありますが、あれが今作の前半部を後半部を明確に隔てている辺りも好感度大です。結局想像力が足りないのはどちらなのかね?と疑問半端に終わり今作が口論の勝敗を決定するシーンは見られませんが、人間にとって想像力とは与えられるものであり、そのために雅哉は主観的な感情よりも事実の描写をより多く欲す。あれはつまり、雅哉は想像力のことを文字通り想像力を言っているんだけれど、美佐子は想像力のことを能動的にこころを動かそうとする没入の姿勢を指して想像力と言っていますよね。しかしその没入は視覚があって成り立つのであって、ここでいわゆる視差というものが生じてしまっていますね、哀しい。久しぶりに人に紹介したいヒューマンドラマ映画を観ることができて満足です。
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