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光のJのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
4.4
・物語★★★★
・配役★★★★
・演出★★★★★
・映像★★★★★
・音楽★★★★

上映開始から10分もすれば、傑作の予感をひしひしと感じます。

数ある「映画を題材にした映画」の中でも、“視覚障害者向けの映画の音声ガイド”という切り口は極めて興味深いと思います。

邦画のヒューマンドラマと言えば、個人的には、ボソボソとした会話や薄暗い画面構成といった印象が強いんですよね…。
でも本作は、視覚障害をテーマとして扱うだけに、ゆっくりハッキリしたセリフ回しが印象的。
タイトルのとおり、“光”が映像効果の上でもストーリー展開の上でも重要な要素として用いられていることは言うまでもありません。

「映画ってさ、誰かの人生と繋がることじゃない?」
序盤で語られるそのセリフに象徴されるように、映画を慈しみながら鑑賞する登場人物たちを通して、映画との向き合い方を考えさせられます。


私事で恐縮ですが、一昨年亡くなった祖父も視覚障害者でした。いわゆる全盲です。
そんな祖父の姿を思い出そうとすると、いつも決まって、一人じっとラジオに耳を傾ける姿が脳裏に浮かびます。

視覚障害者向けの映画の音声ガイドなんて、正直私には思いもよらない職業でした。
本作で描かれるように、葛藤や困難の多い仕事なんだと思います。
でも、これがもっともっと定着してくれたら、祖父のような人にとって、人生における楽しみや生き甲斐が何倍にもなるのでしょう。

様々な形で映画に携わる人たちに感謝をしたくなる一方で、本作に出会えて良かった…そんな気持ちにさせてくれる珠玉の一本です。
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