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特捜部Q Pからのメッセージのcoroのレビュー・感想・評価

特捜部Q Pからのメッセージ(2016年製作の映画)
3.7
どこまでもまっすぐに続く地平線。その足元に咲き乱れる菜の花畑は魔法にでもかけられたかのように美しい。その明媚な美しさを塗り潰そうと背後にそびえる沈鬱な曇り空がこれから始まる物語の行方を予感させる。

7年もの時を漂流し続けてきた空き瓶にしたためられた血文字。そこから聞こえてくる迷える子羊たちの泣き声は神の耳へは届かず、カールとアサドの元へとたどり着いてくる。

被害者たちの哀惜を抱え込み、悔恨の情にさいなまれながら過ごす人間臭いカールと、犯罪以外のことなら何をしても赦してくれそうなアサドの関係性が相変わらず魅力的。
心根で結ばれているのに、噛み合わないふたりの会話や間が絶妙で、陰惨な事件を追っているはずなのにその瞬間だけは微笑ましく見ていられる。





以下ネタバレ

今回の事件は、どうしてもひとつになれない様々な表情を持つ神の王国が舞台。異端と呼ばれているものに対する偏見や、神への狂信が人々の正常な判断力を鈍らせてしまっている。

魔女を裁く異端(彼にとってはあらゆる神が異端)審問官のように敬虔な信者を裁く悪魔のような男と、無神論者故に神罰を(どころか何も)恐れないカールと、どんな差別を受けようと気にもかけない(多分)イスラム教徒で平等主義者のアサドと、王国の迷える子羊たちとの価値観の対比が、サスペンスとしてよりもより深く描かれている。そんなところがこのシリーズらしくて(まだ2作品目だけど)go☆d。
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