MasaichiYaguchi

氷菓のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

氷菓(2017年製作の映画)
3.0
漫画原作の実写化映画でこのところ主人公役が続いている山崎賢人さんと、現在NHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演中の広瀬アリスさんがW主演した本作はアニメーション化もされた、人気作家・米澤穂信さんの青春学園ミステリー小説の実写映画版。
この原作小説は米澤さんのデビュー作で、「〈古典部〉シリーズ」の第1作でもある。
山崎賢人さん演じる折木奉太郎はユニークな高校生で、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモット―とする“省エネ主義者”。
普通の高校生なら部活や恋に頑張って“薔薇色の青春”を送ろうとするものなのに、彼は可も無く不可も無い“灰色の高校生活”を望んでいる。
そんな奉太郎が姉からの脅迫に近い勧めで古典部に入り、同じように「一身上の都合」で入部した同じ一年生の千反田えると出会ったことにより、彼の“省エネ”高校生活に変化が訪れる。
この千反田を広瀬アリスさんがセーラー服姿で演じているのだが、原作にもある決め台詞「私、気になります」を瞳を大きくして発していて印象的だ。
映画はほぼ原作通りに展開していくが、古典部が文化祭で発表する文集の作成にあたって参考にするバックナンバーのタイトル「氷菓」の由来や、千反田がトラウマのように引き摺る10年前に失踪した伯父・関谷純に纏わる謎について、彼らは33年前の過去に遡って調べていく。
この作品は一種の推理物なのだが、主人公が“省エネ主義”な為、現場へ行って足で稼ぐようなことはせず、頭の中だけで解き明かしていくので、ある意味“安楽椅子探偵物”の風情がある。
やがて、一つ一つの資料やヒントから導き出される千反田の伯父・関谷純の“真実”や、彼が名付けた文集のタイトル「氷菓」に隠された意味が明らかになった時、青春の傷みが伝わって来る。
「〈古典部〉シリーズ」は本作以外にも幾つかあるのだが、今後続編が作られるのかどうかウォッチしたい。