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gifted/ギフテッドのnetfilmsのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.1
 フロリダに暮らす仲睦まじい父娘の姿、「とにかく、子供らしく」。初登校の日、黄色いスクール・バスに乗せられた7歳になるメアリー・アドラー(マッケナ・グレイス)が暮らしているのは実の父親ではなく、男手一つで彼女を育てた叔父のフランク・アドラー(クリス・エヴァンス )だった。初登校の教室、「3+3」を聞かれたメアリーはその幼稚な教育内容に絶句する。担任の先生のボニー・スティーヴンソン(ジェニー・スレイト)の疑問の眼差し、二桁の足し算、三桁、掛算と徐々に難しくなるボニー先生の問いかけにもメアリーはまったく動じることなく、答えを導き出して行く。「この子は天才かもしれない」目を輝かせたボニー先生は迎えに来たフランクにも興味を示し話しかけるが、「トラハテンベルク法」という7年間の獄中生活の時に考え出した仕組みだと相手にしない。フロリダの海辺の街で、ボート修理で生計を立てる叔父のフランクは、隣に住む黒人のロバータ(オクタヴィア・スペンサー)にいつも心配されている。メアリーの秘めたる才能に気付き、好奇心でGoogle検索をしたボニー先生の目に飛び込んで来たのは、「天才的な数学者ダイアン・アドラー自殺」の知らせ。父娘に興味を持った先生は週末、場末の酒場で呑んだくれるフランクに勇気を出して話しかける。

 ボストンから遠く離れたフロリダへ、大きな罪の意識を抱えたフランクはこの地で歳の離れた姪と片目の猫フレッドと共に静かに暮らし始める。世話焼きのロバータはいるが他に友人・知人はおろか親族すらいない。映画はこの環境でフランクが男手一つで姪を育てようとする疑似家族の物語だが、平穏に見えた2人の関係には程なくして亀裂が入る。題材でもある「gifted」とは幼きメアリーに備わった天才的な数学の才能に他ならない。然し乍らフランクはメアリーの才能に対し、姉のダイアナからある遺言を受けていた。姉を救えなかった弟、叔父としての姪への責任感はメアリーの祖母であるイヴリン(リンゼイ・ダンカン)の登場で一変する。姉を救えなかった後悔を抱えたフランクとイヴリンの確執、子供の才能は親の贈り物ではないのだが、姉の死で昨日不全に陥った家族はメアリーの親権を巡る司法取引に向かう。何よりもまず人間としての尊厳を重んじられるはずのメアリーの孤独な背中に思わず涙腺が緩む。だが監督であるマーク・ウェブはイヴリンの中に眠る病巣をも浮かび上がらせる。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの大ヒットから3年、再び『(500)日のサマー』のような小さな物語に立ち返ったマーク・ウェブの疑似家族のドラマは、意外性はないが最期までじっくりと丁寧に物語を紡いで行く。「ナビエ-ストークス方程式」に隠された親子の秘密、クラスメイトが作った動物園を全力で肯定しようとした7歳の少女の思いに、思わず涙腺が緩んだ。
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