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gifted/ギフテッドのhirogonのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.1
”gifted”、天から与えられた特別な才能。
本作は、フランク(クリス・エヴァンス)の優しさとメアリー(マッケンナ・グレイス)の可愛さにやられます!そして、二人で飼っている片目の猫フレッドにも。

フランクは数学者の姉ダイアンの自殺後、姪のメアリーを一人で育てています。メアリーも母同様に数学の才能が飛び抜けています。
フランクは、メアリーには普通の生活を送って欲しいと考え、近所の学校に通わせていますが、そこにフランクの母イヴリン(メアリーのおばあさん)が現れます。

クリス・エヴァンスが、ちょっと影があって優しいフランクを好演していて、またファンが増えそうです(笑)
メアリーは可愛い面とおませな皮肉屋さんの面が同居している所を、マッケンナ・グレイスが絶妙に演じています。
フレッドは、二人が飼っている片目の猫。メアリーがゴミ箱で見つけた時には、既に片目だったと説明されていました。フレッドは、一旦離れて暮らすことになったフランクとメアリーを再度結びつける重要な役回りを担います。

イヴリンは、学生時代に自分自身が数学を研究していたこともあり、徹底した数学優先の考えで、普通の生活を犠牲にしたようなその子育ては、娘のダイアンを自殺に追いやった原因でもあります。メアリーの親権をフランクと争うシーンでのイヴリンの主張には、「酷い親だ!」と感じました。イヴリンの英才教育の思想は、”特別な才能を持った人は普通の人より偉い”というような差別思想が見え隠れして頂けないですが、これも映画を引っ張るには必要なキャラなので甘んじて受け入れるとしましょう。

メアリーの担任のボニー(ジェニー・スレイト)もいい!
”子供をちゃんと見てくれている先生”という感じでています。メアリーの教育についてフランクと話し合うようになりますが、二人でお酒を飲みながら、交互に質問と回答をやりとりするシーンも面白かった!フランクの「嫌いな子供は?」という質問に対する本音の回答は、人間味が感じられてより愛着湧きました。その後の二人の関係にも注目!

ロバータ(オクタヴィア・スペンサー)は、フランクの子育てを手助けしているお隣さん。フランクがメアリーを育てる上で、心強い味方です。フランクが実の父親のことをメアリーに話した後、実の父親に見放されたように感じ落ち込むメアリーに対して、フランク、メアリーと一緒に病院に行き、出産に立ち会う家族の喜びように接する場面はジーンときました。見守るロバータの優しい笑顔がとても良かった!
オクタヴィア・スペンサーは「ドリーム」で数学能力に秀でたNASA の技術者ドロシーを演じていたので、本作のメアリーと重なる部分があって面白いです。

フランクとイヴリンの親権を争う法廷闘争の結果、一旦はメアリーを里親に預けることになりますが…。
フレッドの命を張った活躍?(本人は意識していませんが)で、ハッピーなラストへ。暖かい気持ちになれる良い作品でした。

P.S.)数学ミレニアム懸賞問題
映画の本筋からは少し離れた余談ですが、数学ミレニアム懸賞問題について、よければお付き合い下さい。
映画内でも少し説明されていましたが、2000年の時点で未解決の数学的難問(7問)が懸賞付きで発表されました。懸賞金は100万ドル。
ダイアンが証明に取り組んでいたとされる”ナビエ・ストークス方程式”も、まだ未解決の問題です。
ネット検索すると色々とでてきますが、Wikiあたりを見てもらうと概要は分かると思います。
どの問題も、その問題の意味自体が一般人には理解困難なレベル(笑)
このうち、”ポアンカレ予想”は、ロシアのグリゴリー・ペレルマンによって証明されたのですが、この証明までの歴史と証明後のペレルマンの行動が特異なものだったため、世間的にも注目されました。
ペレルマンは、数学のノーベル賞と言われる”フィールズ賞”と、ミレニアム問題懸賞金も辞退したのです。
NHKでも特集番組が作られ、以下のような関連本が出版されています。
・「百年の難問はなぜ解けたのか?~天才数学者の光と影」(春日真人著 新潮文庫)
・「完全なる証明~100万ドルを拒否した天才数学者」(マーシャ・ガッセン著 文春文庫)
・「ポアンカレ予想~世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者」(ジョージ・スピーロ著 ハヤカワ文庫)
・「ポアンカレ予想」(ドナル・オシア著 新潮文庫)
ポアンカレ予想の証明に関わる人間模様は、それだけでもかなり興味深いです。上記の本の中では、「百年の難問は~」がNHKの番組とリンクした内容で、文系の人にも分かりやすいと思います。興味あれば是非。

数学の難問は、数学者が一生をかけて取り組む場合もあって、そこにドラマが生まれやすい下地があります。
ついでに、数学の難問に関する人間ドラマのオススメ本をもう1冊。
・「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著 新潮文庫)
フェルマーの最終定理は、アンドリュー・ワイルズによって証明されたんですが、この証明に至る歴史と人間模様が描かれています。著者のサイモン・シンは理科系の難しい話を分かったようにさせる筆力が高く、これ以外の作品も面白いです。
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