風の旅人

gifted/ギフテッドの風の旅人のレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.0
フロリダで7歳の姪メアリー(マッケンナ・グレイス)と片目のない猫フレッドと暮らす独身のフランク(クリス・エヴァンス)。
メアリーにディズニーのキャラクターのような服を着せ、特別な朝食(ケロッグスペシャル)を摂らせ、初めての学校へと送り出す。
しかし算数の授業で、複雑な計算を次々と解くメアリーを見て、ボニー先生(ジェニー・スレイト)はメアリーが特別な才能(ギフテッド)を持っていることに気づく。
そのことを指摘されたフランクは、それはメアリーが「トラハテンベルク法」を使用しただけだと煙に巻く。
納得できないボニーはパソコンで検索し、メアリーが自殺した天才数学者ダイアンの娘であることを知る(ダイアンはミレニアム懸賞問題である「ナビエ-ストークス方程式」の研究者だった)。
ある日動物園の工作を壊された同級生の男の子のために、メアリーが上級生の男の子を本で殴るという事件が起きる。
学校に呼び出されたフランクは、校長先生からギフテッドに合った学校に転校することを勧められる。
やがてメアリーの数学の才能を伸ばしたい祖母のイヴリン(リンゼイ・ダンカン)と、子供らしい普通の生活をさせたいフランクとの間で、親権争いの裁判が行われる。

この映画で問題になっているのは子供の教育。
物語の展開上批判的に描かれているイヴリンの考えも決して間違いではない。
むしろ多くの人は自分の子供に特別な才能があれば、イヴリンと同じことをするのではないだろうか。
我々は野球が上手ければ将来プロ野球選手に、ピアノが上手ければ将来ピアニストにと、才能と将来の仕事を結びがちだけれど、それが子供の幸せに繋がるとは限らない。
歴史に名前が残ろうが、生きている間は不幸だった偉人は枚挙にいとまがない。

ラスト・シークエンスの車中で、メアリーはデカルトの『方法序説』の一節「我思う、故に我あり」をもじって、「我フレッドを思う、故に我あり」と言う。
この映画を貫く他者への優しい眼差しが集約された言葉。
私はそれを聞いた瞬間、溢れる涙を抑えられなかった。
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