もけ

gifted/ギフテッドのもけのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.5
今年に入って、ようやく自分が観たい映画を観られたと感じました。

町山さんのお話を聞いてから観たいとずっと思っていて、レンタルになったのでやっと観られました。
ギフテッドを描いているというところではじめは興味を惹かれましたが、家族や教育を描いているところに非常に惹きつけられました。
登場人物のバックグラウンドや心情の描写が巧みで、非常に立体感をもって感じられます。

このような子どもの親権をめぐる物語に、裁判が描写されるのは、欧米社会が実際そのように成り立っているからだと思いますが、登場人物の思惑が際立つシーンでもあるので重要ですね。
(『チョコレートドーナツ』、『あしたは最高の始まり』でみかけた)

フランクの母の毒親っぷりが非常に胸糞でしたが、わかりやすい悪人として描かれることなく、様々な複雑な感情を持ち合わせた人物であることがちりばめられていてよかったと思います。

しかし何と言っても、メアリー役のマッケンナ・グレースの演技力がすごすぎることに尽きると思いました。
子どもの無邪気さと天才としての聡明な部分を自然に演じていて、感情表現も巧み。
この子役さん自体が天才ですね。

クリス・エヴァンスもすばらしかった。
ヒーローモノを観ないので今まで縁がなかったんですが、いい俳優さんですね。
そして、安定のオクタビア・スペンサー。

役者が揃っていて安心して観ていられることがすばらしいです。

この作品は天才児が題材ですが、子どもの個性を前にして、大人はどう接するべきか、どう育てるべきかを問うてくる作品です。
子どもの将来を勝手に先回りして「こうすべき」とか「世のため人のため」としてしまいがちであること、逆に「子どもらしくすべき」と子どもらしさを押し付けてしまいがちであることの両方が描写されていました。
子どもには自分で育つ力や個性や適性も備わっているはずなので(もちろんかなり個人差があります)、それをうまく引き出すことが大事なんでしょうけど、なかなか難しいですよね。
日本社会では、個性より集団行動と平均水準を全員が手に入れることをよしとする価値観が教育に根付いていることを考えると、個性を引き出すということは置き去りになりがちです。
「○○しないとだめな大人になってしまう」「○○だと社会ではやっていけない」というような、子どもの将来への恐怖が親や大人を苦しめたりする現実があり、それらはこの映画では、天才としての約束すべき将来だったり、「普通」の人間として生きる自由だったりしました。
どちらに転ぶにしても、一番大事なことは、本人が意思を持って選択できるように待つことなのかなと思いました。
それまでの子育てにできるだけ恐怖心やプレッシャーがかからないような世の中やその仕組みがあるといいのでしょうね。


いいなー、と思ったシーンは、自分の出生を呪いそうになったメアリーを産婦人科に連れていくところ。
愛ですね。
雨降って地固まり、続きを見てみたくなるラストもすばらしかったです。
もけ

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