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出張のisopieのレビュー・感想・評価

出張(1989年製作の映画)
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2015年6月18日(木)ラピュタ阿佐ヶ谷 レイトショー 特集/過激で、キュートな、ユートピア。

監督第2作は沖島勲が出口出名義で脚本を書いた若松孝二の『性の放浪』(1967)を沖島流に語り直したようにみえる。今村昌平の『人間蒸発』(1966)を仮想敵に、27歳の沖島の書いた『性の放浪』と『出張』のあいだには20年の歳月が横たわっている。若松孝二ともども中年男の実感などは想像するしかなかったであろう前者に対して、47歳の沖島が脚本と監督を務めた今作には、生活の澱と人生の感慨がまことにリアルな実感とともに込められている。主人公の石橋蓮司はまさに沖島の分身である。

それにしても、この映画を撮ったときの沖島の年齢さえ追い越してしまった身には、石橋が半生を振り返る台詞がこんなにも染みるとは。まったく映画ってやつは……!
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