ベルサイユ製麺

覆面系ノイズのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

覆面系ノイズ(2017年製作の映画)
2.7
原作が漫画で★超人気があって★音楽ネタである。
これだけの予備知識で鑑賞に臨みました。「ディス・イズ・スパルタ!」な気分です。

…10分ほど観た段階で、急にこの作品(原作)が、どのくらいの年齢層に向けられているのかが気になりだしました。
一旦停止して、検索してみましたが掲載誌の“花とゆめ”が概ね中高校生〜大人の方向けであることぐらいしか分からない。高校生が主役だから高校生向けかな?と思ったのですが、お話のリアリティラインはもう少し若年層向けにも感じられます。それで念の為に画像検索してみたのですが、これがどうも年齢云々では無くて、もっと別の何か特別な感性に訴えかけるタイプの作品のように見え、…正直言ってそもそも実写化に向いていないように思えます。
あくまで個人の感想ですが、原作の絵のタッチは、生身の人間の気持ち悪い部分を完全に払拭した上で、物語るに必要なパーツだけを記号的に再構成したよう…有り体に言えばアニメっぽいです。(勝手にイメージしてた“花ゆめ”のタッチと随分違ってて驚きました!)
原作はおそらく、“この絵で語るべき物語・物語を紡ぐための絵柄”が、不可分に結びついていて、そこに多くの支持や共感が寄せられているのでしょう。
それを、わざわざ再び生身の気持ち悪さを添加して実写にコンバートする意義とは…?

原作未読のため、原作由来なのかオリジナルで書いた脚本なのか判別できないのですが、要所要所のセリフが、とても“肉の身体”が発するとは思えない格好よさでビビりました。主人公たちの行動が、理解の範疇を超えたスピードと方向性で展開され、豪快に振り落とされました。
うーん。…この作品、抽象度の高い(予想ですが)原作の世界観を、違和感無く実写にする為の工夫を、全くしていないのではないかしら?
《この作品を読むくらいの年頃の女の子って、漠然とした想像ですが、好きな曲だけを何度でも聴けて、好きな映画を何十回でも見れて、漫画の好きな部分だけを平気で何度も読めたりするタイプ、な気がしておりまして、なんとなくこの映画の製作者はそういう層の事を舐めてかかってるのではないだろうかと思える。押さえるとこだけ押されとけば文句はないだろ?満足なんだろ?的に》←カッコ内邪推です。怒らないでね。
未完の原作漫画を実写映画にする段階で、否応無く脚本に無理が出てしまうのは分かります。でもその唐突感半端ない脚本以上に、個人的には作品の内的リズム感の悪さが気になりました。とても音楽ネタ作品とは思えないファッキン・テンポです。うー、若い人には、もっと観てるだけで気分が良くなるような芯の通ったグルーヴィな映画を観て欲しい…。こんなのばっかり観てたら映画を好きになれない。
そもそも、原作のエピソードをただ頭から順番に積み重ねていく構成が良くないのかな?主人公の女の子がバンドのメンバーの正体を知るタイミングが、観客のそれと一致していないのとか絶対におかしい。
例えば、フィナーレ付近のライブシーンを頭に持ってきて、フラッシュバック的にエッセンシャルなシーンを抜き出していく…とか、なんか音楽ネタならではの工夫とか…。
因みに音楽の監修は、『マッドマックスFR』の日本版エンディングで映画ファンには余りにもお馴染みの某グループが手掛けていて、この辺りのチョイスも、そもそも広く映画ファンに向けられて作ってない様な印象を受けます。
実際の劇中音楽については好みの問題なのでなんとも言えませんが、個人的にはC・O・T・DのNARASAKIさん(ももクロファンにもお馴染みですね☺︎)が適任に思えました。

俳優さんたちは、志尊淳さん以外は存じない方達でした。…しょうがないよね。原作読んでる世代には、全員お馴染みなのですよね。あー、いつまでも妻夫木さんが高校生やってる並行世界に行きたい…。
中条あやみさん、スピード感の無いお顔の造作は本来なら好みの範疇な気がするのですが、原作のテイストに依るのか矢鱈と顔面アップが多くて、ちょっと怖かったです。特に目頭の辺り…。歌唱に関しては全くの素人なのでなんとも言えませんが、…言えません。

原作継続中な事もあり、この映画、予想し得ないくらい宙ぶらりんなところで終わります。が、別に気にならなかったです。というか、どのタイミングで、例えばフィルムがボーっと焼け落ちても別に気にならないと思う。そういう映画がたまに有る。まるで、由比ヶ浜の穏やかな凪の時ような映画が…。

あ、そうだ。どうしても許容しかねる・どうでもいいやと思えない部分、というか雰囲気が有って、劇中のあるキャラクターがアイドルを軽視するような発言をするのですよね。あと、売れ線の曲作りを批判する発言とか。しかも特にフォロー無しで…。この監督が、どの口でそんな事言わせてんだかなー。
確かに中高生ぐらいのロックファンの間に、アイドルに対する嫌悪感が有るのは何となく存じていますが、…正直それ古く無いですか?自分はJ-POPもハードコアパンクも、ミニマルテクノも、アイドルも、菊地成孔も全て並列で楽しんでます。それぞれの良さが有るからね♪
国内でもかれこれ15年近く前に、パンクスやB-BOYが入り乱れてハウスで踊るようなパーティが誕生していました。今ならiPhoneだけで完パケさせたCDをスマッシュヒットさせる現役大学生も居ます。韓国ではトップアイドルがメチャサグいラッパーの客演曲をヒットチャートにガンガン送り込んでます。風通しがうんと良い。
音楽の事でいがみ合ったり、徒党を組んだり、区別したり、競ったり…、そのいびつな行為の寂しさ、醜さはこの映画の見え方にも影響を及ぼしてるいるように思えました。原作の事は分からないけど。

コレもっかい、ちゃんと撮った方が良いよ。
監督は普通にクドカンで良いと思う。覚えてる限りで言えば、『木更津キャッツアイ』のブルーハーツもどきのバンド結成のくだりが、日本の映像作品で一番楽しそうな“バンドやろうぜ”シーンだと思うのです。若い人も観てみてね☺︎