イチロヲ

赤線最後の日 昭和33年3月31日のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.5
売春防止法の施行を控えている娼婦たちが、様々な思惑を抱える客人たちと、最後の交歓に興じていく。かつて新宿二丁目に存在していた赤線地帯を舞台に、売春防止法が敷かれる直前の群像劇を描いている、日活ロマンポルノ。

様々な境遇に置かれている4名の娼婦が主人公だが、宮下順子と芹明香のふたりが中心に据えられている。前者は情夫を待ちわびながら唯々諾々と従事する娼婦、後者は荒稼ぎのために粉骨砕身する娼婦。

口八丁手八丁で客人を廻していく芹明香の言動が痛快だが、翻ってみると売春業が無くなると同時に、自分の価値がゼロになってしまうことに対する、恐怖心や猜疑心の反動とも捉えることができる。

売春街に出入りする客人と娼婦の悲喜が情感たっぷりに描写されている。本編中に註釈が挿入されるため、売春防止法を学ぶための教材としても最適。
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