NARU

ユリゴコロのNARUのレビュー・感想・評価

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
3.2
「殺人に取り憑かれた人間の手記」を父の書斎で見つけた息子の話。

原作読了後すぐに視聴。
結論から言うと、原作の持ち味を活かせていない映像化だった。

絵での表現に注力している点は映画として素晴らしいが、本作においてはもう少しセリフに頼ってキャラの内面を掘り下げて欲しかった。

原作の美点は「殺人鬼の内面とその変化」だと思う。

たとえば、殺人者が「古井戸の穴に吸い込まれそうな恐怖」に襲われるシーン。
原作ではその強迫観念や不安が、殺人に至る原体験になっている。
にも関わらず、本作ではそれを映像として表層的にサラッと描いており、人物の内面が掴めない。

主人公は手記を読んでその映像を思い浮かべてるはずなので、手記の内容をセリフで表現してもよかったと思う。
(原作ではノートの内容がそのまま小説の本文になっている。)

ただ、「主人公の内面」の視覚化は良かった。
原作では「弟に相談」する形で心理状態を描いていたが、本作では車の運転や暴力などでストレスを描いていた。
原作の後半は謎を引っ張りすぎて少しテンポが悪いので、そこをサクッと描いてくれた点は良かった。


まとめると、本作は視覚表現により「殺人鬼の内面とその変化」を伝えきれていない点では評価できないが、謎や伏線を視覚化してサラッと描いてくれた点は評価したい。

「殺人者の手記を読む」というアイデアがそもそも活字メディア向けなので、興味がある人は原作を読んで欲しい。
NARU

NARU