ShimaD

ユリゴコロのShimaDのレビュー・感想・評価

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
4.0
「あなたの優しさには容赦がありませんでした」

*「血」や「痛そうな描写」が苦手な人は心して鑑賞してください。
*ネタバレはコメント欄に移動しました。

完成披露試写会にて鑑賞しました。上映前の舞台挨拶ではキャストの皆さんがネタバレをしないよう気を遣ってコメントされていましたが、映像が饒舌なのでミステリーとしてはかなりあっさりと真相に気づけます。

しかし本作の魅力は構造上のトリックや謎にあるわけではなく、それぞれに傷を持った人物たちが織りなすドラマであったり、衝撃的なシーンにおける鮮烈なビジュアルにあると感じました。

鮮やかな照明や色彩で表現されるイメージはどこか浮世離れをしていますが、耳をふさぎたくなるほどの音表現とあいまってリアルな痛みまで伝わってきます。
よくあるゴア描写よりも生々しいと思いましたし、痛そうな映像がダメな人は本当にNGなのでは…。


主演の吉高由里子を始め、松山ケンイチや木村多江らの演技は真に迫るものがあり、とくに松坂桃李くんはいちばん複雑な演技をしていて、生唾を飲むほどの迫力がありました。

紛れもなく愛の話ではあるのですが、清々しいタイプではなく常に後ろ暗いような、言葉にできない歪んだ愛のカタチに、誰もが苦しみながらもその温かさを享受している様子がまた痛々しくて。共感はできないのに、辛くて胸が苦しくなります。

各登場人物が心に持っている棘を「オナモミ」で表現しているのも秀逸ですね(じぶんはこう受け取りましたが各々に想像できる表現)。
人工物ではなく、植物の棘というのが不気味さや卑猥さも感じられます。
どんなシーンでオナモミが出てくるのか注目してほしいです。
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