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ユリゴコロのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
5.0
カフェを営む亮介(松坂桃李)の日常はある日突然崩れ去った。男手ひとつで育ててくれた父親が余命わずかと診断され、結婚を控えていた千絵(清野菜名)はこつ然と姿を消してしまったのだ。
新しい家族を作ろうとしていた矢先の出来事を受けとめきれない亮介は、実家の押し入れで一冊のノートと巡り会う。
「ユリゴコロ」と書かれたそのノートに書かれていたのは、美紗子と名乗る女(吉高由里子)の手記。
人を殺めることでしか自分の生きる世界と繋がることができない女性の衝撃的な告白 だった。 
そんな美紗子もやがて洋介(松山ケンイチ)と運命的な出会いをし、「愛」というこれまで知る由もなかった感情に触れることとなる。
しかしそれはさらなる悲劇の幕開けにすぎなかった。自らの失意の中、美紗子の人生の奥深くに触れていくにつれ、次第にその物語が創作だとは思えなくなる亮介。
いったい誰が、何のためにこれを書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこの手記に惹かれるのか。
そして機を待っていたかのように、千絵のかつての同僚だったという細谷(木村多江)が 、千絵からの伝言を手に亮介の前に現れた。
徐々に明らかになっていく亮介の出生の秘密、美沙子という女の人生、亮介を助けようとする細谷という女の正体、彼らが拠り所とした「ユリゴコロ」とは?
沼田まほかるのベストセラーミステリー小説を、映画化。
亮介の婚約者の失踪そして亮介の父親が抱えている亮介の母親の秘密をめぐるストーリーと亮介の父親が持っていた「ユリゴコロ」というノートに書き記されていた美沙子という女の手記が交錯していく中で、生まれながらに「愛されているという実感ユリゴコロ」を持たずに殺人という行為でしか「ユリゴコロ」を得られず生き、同じように痛みを抱えて自傷行為でしか「ユリゴコロ」を得られない親友とも別れ絶望の中で生きてきた美沙子が罪の意識を抱えて生きてきた洋介と痛みを分かち合い心を通わせ愛され子供を育てる中で愛を知る壮絶な人生、「ユリゴコロ」の内容に影響され自身の狂気を目覚めさせていく亮介、お互いに罪の意識を抱えて生きて子供を育てる中で罪悪感を愛に昇華させて生きてきた洋介と美沙子の子供に明るい未来を託す大きな愛が描かれ、罪や苦しみを背負い時には間違った道を歩んだとしても痛みを分かち合い心の拠り所になる人がいれば生きていけるだから目の前の大事な人をちゃんと愛しなさい、そんな温かなメッセージを宿した傑作ヒューマンサスペンス映画。
殺人を「ユリゴコロ」に生きてきた美沙子を無表情の中に秘めた複雑な感情や葛藤を含めて丁寧に演じた吉高由里子、罪の意識を抱えて子供を「ユリゴコロ」に生きてきた洋介を演じる松山ケンイチ、「ユリゴコロ」というノートの内容に影響され自身の狂気を目覚めさせていく情念と自分の母親の秘密を知る葛藤を含め亮介を演じた松阪桃李の熱演が、印象的。
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