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アウトレイジ 最終章のnaoズfirmのレビュー・感想・評価

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)
3.4

アウトレイジシリーズ第3作目🎬

ストーリーは過去の清算の機会を狙う大友の暴走と花菱会のトップを狙う暴走を軸に暴力や傲慢の裏で背負った苦悩や悲哀を描いた作品でした。

"シリーズを通じて"
シリーズ3作を通じて描かれていたのが群像劇を通して見えてくる組織の栄枯盛衰です。どんなに強大で、巨大な組織であっても、集団としてのまとまりを支えているのは「誠意」や「信頼」に基づいた良好な人間関係なんです。個人のエゴ丸出しな裏切り・駆け引き・騙し合いによって、組織が内部から瓦解していく様子を、ヤクザの群像劇と言う形でわかりやすく提示したのが、「アウトレイジ」シリーズでした。「アウトレイジ」シリーズ3作を通して共通するのは、ストーリーの展開の仕方です。最初は他愛もない小競り合いから物語がスタートしますが、メンツや意地を優先するヤクザ社会特有のロジックや、関係者の思惑によって、騒ぎがどんどん大きくなり、登場人物全体を巻き込む大抗争へと発展していきます。そして、主人公の大友やその一派以外は見事に「仁義・任侠」といったヤクザ社会の理想とは程遠い俗物ばかり。一旦抗争に入ると、誰しもが「自分第一」で利己的に生き残ろうとします。その過程で、生き残りに失敗した者は死んでいき、上手く立ち回った者は、一時的に命を永らえる。今作でも運良く生き残ったメンバーは花菱会で好位置を獲得しますが、所詮「裏切り」と「駆け引き」によって一時的につかんだ地位。仮に、もし続編があればきっと彼らもまた別の機会に凶弾に倒れることになるのでしょう、、ヤクザ組織の場合、ヤクザ特有の意地の張り合いから、最後は強引に命の取り合いと言うかたちで決着するので、政治家や医者といった他の組織よりも結論が非常に分かり易いのですよね。このご時世、テレビでは扱うことが難しいヤクザ同士の生々しい抗争を題材として、圧倒的に豪華なキャスト陣で大作映画シリーズを作り上げた北野武監督。他の映画監督や、TVドラマでは絶対に実現できない、今、見るべき価値のある大作だと感じました。

"作風"
1作目は、生々しい直接的なバイオレンス描写が特徴的でした。画面を見ていて思わず目をそむけたくなるような痛々しさは忘れられません。2作目は、一転してヤクザの幹部同士の抗争劇を描いたため、暴力の応酬は控えめになり、変わって丁々発止の言葉による応酬・心理戦が最大の見どころでした。そして、今作の3作目。病み上がりで物理的に動けないメインキャスト陣の「老い」もあって、前半は特に顔面にフォーカスされた「顔芸」がメインでした。しかし、抗争が激化した物語後半では、諦めの心境を通り越して、死に場所を求めて最後に大暴走を始めた大友オンステージ。ただ、機関銃や一撃必殺の暗殺シーンには、不思議と生々しさは薄く、どこか夢のような描かれ方をします。クライマックスにかけて、1作目・2作目で徹底されていたエンタメ路線が鳴りを潜め、諦念や虚無感の漂っていました。
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