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恋愛奇譚集のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

恋愛奇譚集(2017年製作の映画)
4.0
先行上映、終映後に舞台挨拶。郡山から南へ車で小一時間、会津と中通りを結ぶ湖水豊かな桃源郷こと天栄村にて撮影されたとあってこれはもう、福島生まれ福島育ちとして見逃すわけには行かない作品なのでした。

とかなんとかうそぶきながらも実際のところ、福島県ってそれはそれはもうおそろしく広いんですね。わたしが生まれ育った町から天栄村まで、余裕で90kmくらい離れてるんですね。東京からだと小田原あたりまで行けちゃう距離感だったりするんですね。なもんで、土地勘や愛着があるかっつうと正直そこまでとは言えません。にもかかわらず、終映後には「福島さいこう…!」と地元愛があふれ出ちゃってとまらなくってどうしよう?みたいなことになったんでした。いやー、よかった。よかったよかった、本当によかった。

何がよかったかってそれはもう、まず、信じられないほど美しいんです映像が。え?これ、俺の知ってるあの福島?本当にあの福島?ってくらい、眩しい光と豊かな緑ときらめく水面が輝いてる。天栄ってか福島ってかこれ日本?って気がしてくるくらいに。

カタコトの日本語と憂いを含んだ眼差しが印象的なヤオ・アイニン、後悔に苛まれる佇まいに只事ではない色気を滲ませる和田聰宏、傷ついてやけくそになってそれでもなお自分らしくありつづける内田慈、この3人が3人とも魅力的でした。伝わらない言葉と伝えられない気持ちのもどかしさが辛くて寂しくて、でも美しくて。

登場人物が多くそれぞれの関係性も込み入っているため、ところどころやや分かりにくい部分もありました。が、そういうのはもうどうでもいいからとりあえずこの画をずっと見ていたい、と思わされるだけの美しさが映画の隅々にまで満ちていました。これはもちろん身内贔屓の欲目ありきの話ですが、どうか遠くの街のひとにもそう感じてもらえますように、と願わずにはいられません。

そういうわけでわたしの場合、赤と青とオレンジがかったクリーム色が特徴的な福島交通路線バスが映し出された時点でもう、早くも涙腺崩壊しかかってたんですね。このロケ地絶対アレだろ岩瀬農業高校だろ、とかいちいち気づいちゃ涙ぐんでたんですね。もうだめだ。とてもまともじゃいられないよ。取り急ぎルポタージュ本「メイド・イン・フクシマ 恋愛映画」も注文したので、届き次第また思うさま余韻に浸ろうと思います。
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