なっこ

ナミヤ雑貨店の奇蹟のなっこのレビュー・感想・評価

ナミヤ雑貨店の奇蹟(2017年製作の映画)
3.0
物語の途中で登場人物の誰かが死んでしまうような物語は好きじゃなかった。けれど、現実世界で度重なる災害を目にするようになって、“死”というものがもっと身近にあると感じられるようになってきたように思う。喪失から再生へ。“災間”を生きる現代において、“死”はかつてのように英雄視されるような尊い自己犠牲ではなくて、避けようのないありふれた危機であるかのように描かれることが増えた気がする。

今の私たちには、それほど死者は近い存在であり、その声をできることならば聞きたいと思っている。この物語は、題名からして“奇跡”だと言っているのだから、何が起こっても文句は言えない。ファンタジーがもつ力を借りて、誰かの願いや希望を美しい物語に仕上げていると素直に思うことができた。

誰かに手紙を書くこと。書きながら考えること。それはやっぱり、自分の字で精一杯その人の幸せな未来を願って言葉で飾ろうとするものなのだと思う。今はメールも電話もすぐにつながる。自分の声で伝えることもスカイプやFaceTimeで顔を見ておしゃべりすることもできる。それが、真っさらな便箋に向かってひとり文字を綴ることとどう違うのか、明確には言えない。けれどやはり、何か違う。その何かを改めて考え、やっぱり手紙っていいな、と思った。

そして、山下達郎さんの主題歌に感動しました。メロディと歌詞、どちらも素敵です。
自分ばかりが大変で、たったひとりで生きてる気になってしまう時もあるけれど、この命は誰かに渡された命のバトンであって、その人がどこかで見守ってくれていること、そんな風に思うのも悪くない、命はみんなつながっているのかもしれない。あの商店街の人と人とのつながりのように、案外小さくて身近な輪であるのかもしれない。

私がこの世を旅立つ時に、頑張ったねと迎えに来て欲しい人は誰だろう。そんなことを考えた。
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