<概説>
世界各地の廃墟をありのままにカメラに収めたドキュメンタリー映画。人間の気配がそこから喪われてなお、建造物は私達になにかを語りかける。
<感想>
冒頭からどう見ても日本の景観が映写されて驚愕。
邦画や国内ドラマではこういった半自然の映像が少ないものですから、国内で画になるような自然景観は残ってないのではと勘違いしていました。田舎に自然こそ残ってはいますが、それは画にならんのではないかと。
しかしそれはとんだ勘違い。
自然のみならず人工物までうち捨てて、意図せず感情震わす景観が産まれていたのですね。なんとも、胸にきます。
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と感動するのはちょっとそこまでにしておいて、ここからは少々気になってしまったことを。
『いのちの食べ方』の時は気にならなかったのですが、監督はナレーションやモンタージュを使用しません。そのためカメラに映った映像がほぼそのまま作品になっています。
しかし本作の映像というのは廃墟がメイン。
そのため作品の音は一切ありません。また建造物が動作を見せることはなく、映画作品ではなく単なる写真のツギハギのよう。
聴衆が主体となるジョン・ケージの『4分33秒』ならともかく、本作に映画を作品媒体と意味はあるのでしょうか。どうもそこが引っかかってなりません。