いの

私はあなたのニグロではないのいののレビュー・感想・評価

4.1
ジェームズ・ボールドウィンの未完成原稿『Remember This House』を基にしたドキュメンタリー映画(以上、wikiによる)。①彼の講演・インタビューなどからの映像、②サミュエル・L・ジャクソンによる朗読。いつもの彼のイメージとは程遠い、低く抑えた声での朗読が、この映画に彼が込めたであろう思いを切実に伝える。③メドガー・エヴァース、マルコムX、マーティン・ルーサー・キング牧師らの映像。ジェームズ・ボールドウィンが、各々のことをどう思ってきたのか、各々の悲報に際してどう振る舞ってきたのかも語られる。彼らよりも先に生まれた自分が生きていることの複雑な思い。残酷なこの国で生き抜くこと。 ④ここまでいかに白人による差別が平然と行われてきたのかを示す数々の映像。これが本当にキツい。人間はここまで人を人と思わず、踏みにじることができるんだと。 ⑤時折インサートされる様々な映画。アメリカの映画が、黒人をどのように取り上げてきたかが提示される。



ジェームズ・ボールドウィンは穏やかな振る舞いで紳士的な語り口(いつもキチンとした身なりでいなければ、命の危険にさらされるのだという映画も観たことがある)だけれど、そこには理不尽な差別への怒りが込められている。過去から現在に至るまで連綿と続いてきた差別を、決して見つめようとしない人々に対する問題提起でもある。こんなことではアメリカの未来はないと。できるだけ多くの人の心に届いてほしいからこその、この振る舞いと語り口なんだと思う。観た者がちゃんと受け取ろうとしなければ受け取れないし、ちゃんとわかろうとしなければわからないままなんだから、心してわたしもちゃんとしていきたい。心のなかに潜む差別意識は、わたしは全然大丈夫そんな差別なんか全くしたことないと言い切れる人ほど実はあやしいのかもしれない、自分で気づいていないだけで。この真っ直ぐで力強いタイトルを前にして、わたしはうつむかないで顔を上げて真っ直ぐ見つめ返すことのできるわたしでいられるのだろうか。それはこれからも自身に対して問うていかなければならないのだろう。



 :::

「それでも夜が明ける」でいちばん衝撃的だった場面が、実際に行われた写真として何枚も登場した。そのむごさを想像してみることしかできないけれど、想像してみることしかできなくてごめんなさいだけど、少なくとも想像しようとすることは手放したくないと思う。





〈自分用メモ〉
・マーロンブランドも公民権運動に参加していたことは知らなかった。



メドガー・エヴァース
(1925-1963.6.12)

マルコム・X
(1925-1965.2.21)

マーティン・ルーサー・キング
(1929-1968.4.4)

ジェームズ・ボールドウィン
(1924-1987)
いの

いの