マーチ

私はあなたのニグロではないのマーチのレビュー・感想・評価

4.0
ドキュメンタリー映画というよりは資料映画なので、一々内容を挙げつらうのではなく、少々個人的な見解を記述しています。

あ、あと初めて行ったアップリンクはいい雰囲気の映画館でした。特に売店!!


【レビュー】

《This Is America/自由という名の下に》

このドキュメンタリーは完全保存版となるでしょう。情報の凄まじい波に私自身ついていくのがやっとだったので、レンタル等で最低でもあと1回以上は観てこの作品をしっかり補完しておきたいと思います。

キャスリン・ビグローが『デトロイト』を撮るのも、ケンドリック・ラマーがブラックカルチャーのトレンドしてリアルタイムで人気を得ているのも、チャイルディッシュ・ガンビーノが「This Is America」という楽曲とMVでメッセージを発信しているのも、『ブラックパンサー』が爆発的ヒットを記録したのも、全てが今の象徴であり、黒人の歴史がアメリカの歴史たる所以なのだ。

知っている“つもり”だった歴史はまだまだ浅くて薄いということを実感させられたと共に、「他国の問題だからと俯瞰して見て見ぬ振りしてる場合じゃないぞ、全人類!!」と言いたくなる重厚な内容だった。アジア人だって未だに差別対象になり得る訳で、相手側に立って考えず、勝手な憶測や偏見で膨らんだ被害妄想がどれだけ恐ろしいことなのかについても詳細に語られているため、どういう経緯で血塗られた歴史が蓄積されていったかも深く理解できた。

また、とあるシーンで白人の司会者がボールドウィンに「こんなに社会が良くなっているのに、これ以上何を望むのですか?」と言っていて戦慄した…逆の立場だったら同じようなことが言えただろうか?…なぜ“自分たちが歩み寄ってやっている”という上から目線でしか発言できないのか…あの司会者の何の気なしの発言が差別意識の根深さを物語っていた。涙を浮かべるボールドウィンの表情が忘れられない。

ドキュメンタリー映画として人種問題を扱うのに、過去の映画作品を引用し、羅列することで、名作と呼ばれている作品の中にも白人主観でしかその正当性が語られていないものが多く、黒人から観れば実に恐ろしい現実が映し出されているという場合もあるのだと知った。当時の社会背景が歪んだ構造の映画を産み出していることは明白で、多様性に配慮した映画が多く作られていたり、それらが社会に活気を与えて賞レースで注目されていたり、「inclusion rider」という仕組みについてマクドーマンドがアカデミー賞スピーチの場で議論を呼びかけたりと、多様性が叫ばれている現代だからこそ全ての人種が手を取り合っていけるよう社会を変えていかねばならない。今はその過渡期(と言っても始まったばかり)にいるのではないかと個人的に感じているので、この映画が単に黒人白人問題としてではなく、全ての人種に関する問題として広く知れ渡ることを望むばかりです。

【p.s.】
とにかく歴史的資料として残すべき素晴らしい作品なので、皆さん観て下さい。自分のことだと思いながら観るとまた感じるものが違ってくると思います。

黒人にルーツのある映画だったり音楽だったりが沢山引用されていますし、キング牧師やマルコムXが先陣を切ってた時代の流れをそのまま掴む事が出来るので必見です!
(パンフレットが珍しく良質で読み応えがあり、シナリオ採録まで載っているほど充実した内容なのでオススメです。)

ラストに流れるケンドリック・ラマーの曲が静寂を切り開き、まだ始まりに過ぎないことを告げると共に、実に力強い彼の歌声が立ち上がることの重要性を教えてくれる。


【映画情報】
なし