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散歩する侵略者のsugenonのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.9
回路の予測のつかなさ加減
CUREの得体のしれなさ加減
クリーピーの後味の悪さ加減
全てを包括する満足の黒沢クオリティでした。音楽が割とコミカルなのは新機軸かな。侵略者達が淡々と行動を起こしているのを巧く盛り上げていたかと。





以下ちょっとネタバレ





概念を集めることで人間を理解し、侵略しようとするプロットは面白かった。でも彼らが人間に憑依した際の、その人物の基本デフォルト知識はある程度持っているはずなので、多少無理があるなあとも思う。

ただテーマとしている「言葉」として発しているけどその奥にある概念とは?それは人間にとってどういうものか?を改めて考えさせられる哲学的な部分は嫌いじゃない。いや好き。それを奪うとその人からその概念がなくなってしまうというのが物語の最後に非常に活きている。

「家族」「自由」「〜の(所有)」「自分」「仕事」そして「愛」

その概念を人は大事にもするけど、言葉に縛られてもいる。個人だけでなく、国や人種という括りがそれに縛られ過ぎることは、世界を滅ぼす方向へ導いているともいえる。長谷川博己演ずるジャーナリストはそれをブレイクスルーさせたくて、あの行動に出たんだろうな。

全編通して困った顔してる長澤まさみが可哀想なんだけど、松田龍平演ずる夫のしんちゃんへの愛情が愛おしすぎて胸熱。長澤まさみ、やっぱり可愛いなあと感じる映画でもある。

ラスト間際
男「全部変わって見える」
女「何にも変わらない」

のセリフが、もう取り返しがつかないんだよと胸を締め付ける。出来るだけ後悔のない人生を送りたいと思わせる、黒沢清、愛の映画でした。
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