真田ピロシキ

散歩する侵略者の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
2.9
ああっ、惜しい。概念を奪う宇宙人の哲学的侵略SFとして面白くなりそうだったのに雄弁に過ぎる。人類が抱えている曖昧な概念について突き詰めて考えられそうだけど、例えば家族とか所有とか自分と他人だとか、それらの何もかもを懇切丁寧に口で説明されると陳腐な説教になってしまう。長谷川博己の「皆さん本当は気づいているでしょう?」も意図がスケてては無粋なのです。何でも言葉にしたがるのは人類ではなくこの映画。愛で締められるのが尚更に陳腐で。その辺も喋りすぎてて、もっと煙に巻いてくだせえ。

分かりやすさは演出にもあって、侵略SFらしいことをやっているものの、金をかけた大作ではないからヌルくて「何でその距離で外すの?」みたいな本来どうでも良いことが気になる。映画にすると嘘が目立ちすぎてて、これが舞台なら上手くハマってたんじゃないかな。元々が舞台劇らしくて納得。松田龍平が乗っ取られて人間性を喪失した男を演じているが、龍平大体いつもこんな感じやない?笹野高史の方がずっと得体の知れない奴で、人類の方がよっぽどワケ分からないということか。

黒沢清監督は昔のような意味が分からないなりに記憶に残る掴み所がない作風の方が良いです。『降霊』なんてあれでTV映画だったんだぜ!客に媚びないで欲しい。