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散歩する侵略者のwakjgのネタバレレビュー・内容・結末

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

陰影と明暗のコントラストが美しい。黒沢清は照明が印象的だ。
再生してゆく愛のものがたり。


まず、俳優の布陣が素晴らしい。
飄々とした風貌でありながら、生真面目さをも孕む松田龍平。
その線の美しさを存分に活かし、ガイドの位置付けからターミネーターのようになった長谷川博己。
神父があまりにはまる東出昌大。

宇宙人による地球侵略計画により、三人の刺客が地球(日本)に送り込まれ、人間の持つ概念が奪われる。概念を失った人間は、幸福になったのか不幸になったかは人それぞれだ。しかし概念を奪われる侵略により、人類は危機感を持ち、意識が変わったことは明らかである。

夫の身体が宇宙人に乗っ取られ、案内役ガイドとなった妻は、夫婦再生を重ねて侵略者と共に散歩する。
コップの中身が変わったように、"以前の夫"から宇宙人へと引き継がれた夫。
精神を宿す器としての肉体であり、精神は当然入れ替わっている。
しかし、夫との記憶を愛するように、妻は滅亡を目前に夫への愛を永遠へと転化する行為として、愛の概念を夫への差し出す。そして、愛の概念を知った宇宙人は侵略を中断する。
なんとロマンティックなのだろうか。

一方、少年のガイドとなったジャーナリストは、恰好のネタとしてルポタージュしてゆくが、いつのまにか、その少年の姿を息子と重ねていた。自らの命の存続を選んだ背景には、彼と共に生きたいという意思も少なからずあったのだろうか。
少年の息が絶え、少年がジャーナリストに乗り移ったのか、はたまたそうではなかったのかー、はわからない。

肉体に宿る精神が変容してもなお、愛し続けることができるか。
病気になって意識の戻らない誰か、認知症になってしまった誰か、以前と変わってしまったパートナーや恋人を、引き続き愛し続ける想いの純粋さを、強く感じる愛の物語だった。
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