ブタブタ

最後の家族のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

最後の家族(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ひとことで言うと悲喜劇。
ベクシンスキー画集の解説文にベクシンスキーの絵画は遠い未来を描いてる~とあったのですが、ベクシンスキーの絵は科学が進み過ぎて人工生命や人工知能による第三次大戦・第四次大戦後の遠未来の風景で、明らかに突然変異種の生物のミイラや雲つくような巨人の死体、半分生物のような戦車や爆撃機等々、生物・細菌兵器による壊滅的な最終戦争が起きて全ての文明が滅び去った後の静寂。

同じ様に闇の世界を描く画家としてギーガーが「暗黒の宇宙」だとするとベクシンスキーは「暗黒の未来」

『darkstar・HRギーガーの世界』で見たギーガーの晩年(今思うと)の生活は自らの作品で埋めつくされた「ギーガーハウス」でまるで隠者か魔術師の様に黒づくめの格好で奥さんや多くのファンたちに囲まれ、また創作に没頭にする幸せなモノだったのに対して『最後の家族』に見るベクシンスキーの晩年は同じ世界的・天才的アーティストながら何故こんなにも違うのだろうと思うほど辛いものでした。

浮世離れした異界の住人の様なギーガーと、見た目は普通の勤め人・家庭人にしか見えないベクシンスキー。

妻の死と長年鬱病に苦しんだ息子の自殺、そして自分も長年パトロンだった友人の息子に金を無心(それも日本円でたった1万だとか)され断った為に全身滅多刺しにされて殺されると言う信じ難い最後。

しかしそこに至るまでの日々が何処かのほほんとしていて、ベクシンスキーの描く異界、家族との日常、やがて訪れる悲劇が三位一体となり何とも言えない不思議な空気を醸し出していました。

東京都写真美術館、ポーランド映画祭にて。
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