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8年越しの花嫁 奇跡の実話のSyoCINEMAのレビュー・感想・評価

8年越しの花嫁 奇跡の実話(2017年製作の映画)
4.0
元々、闘病ものの映画は苦手だ。どういう気持ちで見たらいいのかわからない。「かわいそう」と思うのはおこがましいし、なんというか、苦しんでいる誰かをエンタメの材料として見るのに抵抗がある。お涙頂戴の作品になんかなっていたら、僕は涙もろいからどうせ泣くけど、なんかごめんなさい。。。ってなっていたたまれないのだ。

本作は実話でもあって、それで余計に作品を見ることは多分ないだろうなと思っていた。でも、縁があって拝見して、最初に思ったのは「びっくりした」という感情。こういった作品にありがちな、やりすぎ演出がどこにもない。「ほら泣け! ほらほら‼︎」みたいなのが見当たらない。勿論、作り手側の泣かせ所は感じる。でもそこに、真摯な姿勢が見える。脚本にも演出にも出演陣の演技にも。とても繊細で、丹念で、しっかりとした芯のある映画だ。一言で言うなら、「敬意」を画面の端々から感じた。

「64」シリーズで知られる瀬々監督はドキュメンタリーもかつて手掛けていて、その方法論を持ち込んだという。確かに、びっくりするほどリアルな「地方の人々の恋愛の仕方」が描かれている。自分も福井の田舎出身だから、「ショッピングモールに集合して車を停めて、片方の車に乗ってデートに行く」という演出が「わかる!」と叫びそうになった。2人がいく喫茶店のお洒落すぎない感じとかも、地方人あるある満載で、他人事と思えなくなってくる。
そういう、病気になるまでに観客が親近感を抱く餌の捲き方が上手い。

そしてもう、佐藤健くんと土屋太鳳ちゃん。なんですかこれは。生きているよ、役者としてじゃなく、役として。

自分も「演じる」ことをやっていたこともあって、すごく考える。だからこそだけど、健くんの「受ける」演技の上手さには舌を巻く。彼は画面の中にフラットな状態でいることが抜群に上手くて、あんなにイケメンなのにどんなに素朴な人間にもなれる。今回もそう。話し方、呼吸の仕方、目の合わせ方、全部が「その人」に不可欠なパーツとして組み上がっていて、その上で役を作っている。

そして太鳳ちゃん。自分が見てきた中で、ベスト級の熱演だと思う。女優・土屋太鳳の底力を見せつけられた。身体の使い方がとにかく巧み。病気になった時の身体への負荷のかかり方とか、多分ものすごく研究して、そしてそれを立体化することに努力を重ねたんだと思う。
演技も勿論素晴らしい。でも本作の彼女には、それを超えた信念めいたものを感じた。インタビュー等を呼んでいても、ご本人たちへの強い敬意を語っていたし、そういった気持ちが演技に表れていたと思う。ものすごい試合をしているスポーツ選手みたいに、目が離せない。こちらを画面に引きずり込むパワー。「こんなに面白い女優さんなのか!」と圧倒された。

本当に丁寧な映画だった。
自分みたいに、普段このような題材を避けがちの人にこそ見てほしい。そう思った。