アキラナウェイ

8年越しの花嫁 奇跡の実話のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

8年越しの花嫁 奇跡の実話(2017年製作の映画)
3.7
「ライオン 25年目のただいま」と同様、「8年越しの花嫁」なので、もう結果がわかった上で、どの様に感動を演出するか。ましてタイトルに堂々と「奇跡の実話」と名乗ってしまう明け透けさ。感動させてやる感が溢れ過ぎている!

俄然こちらも受けて立とうと涙と鼻水ドバドバ流す気満々で鑑賞。そしたら、良く出来た、出来過ぎた優等生作品でした。

所謂合コンで知り合った尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)はいずれ結婚を約束する仲になる。しかし、婚約直後麻衣を抗NMDA受容体脳炎という難病が襲う。麻衣は6年に渡る長い昏睡状態に陥ってしまう。

クロエちゃん主演の「彼女が目覚めるその日まで」を観ていた事で、病気に対して一定の理解があったのは良かった。躁鬱状態の激しさや、周囲の家族の苦しみを描いた「彼女がー」に比べ、本作は昏睡状態の長さや献身的に看病するパートナーの愛情にフォーカスが当たっており、感触は別物。個人的には本作の方が好み。

実直真面目に愛を貫く姿勢を佐藤健は見事に演じているし、土屋太鳳の体当たりの演技には脱帽。女優として、本当にとことんリアリティに拘って演技していた。どっちが役者としてチャレンジングだったかと言えば間違いなく土屋太鳳。そしてクロエちゃんよりも、もっと現実に寄せて来た印象。

主演2人以外では、尚志が務める小さな自動車修理工場の社長を演じた北村一輝が特に印象に残った。汚れた作業着で気さくに笑うキャラクターがこれまでの彼の印象と大きく違ったからだ。

強いて言えば、8年の月日の流れ、その重みが今ひとつ伝わってこないのが残念。佐藤健の髪型が全く変わらない。風貌が全く変わらない。ただ日めくりカレンダーが捲れていくだけの様で、もう少し演出面では改善出来たと思う。本当に気になったのはそれぐらいで、ラストに流れるback numberの楽曲を含め良く出来ている。優等生的な仕上がりは、逆に出来過ぎていて、涙は溢れても号泣には至らず。

なんでこんな印象になったかと言えば、佐藤健演じる尚志というキャラクターが本当に献身的でブレず乱れない為か。もっと取り乱して、もっと悩んで葛藤して、そういった人間的な面が見えればまた印象は違ったかも。

鑑賞後乗り込んだエレベーターで、女子2人組の1人が呟く。

「あんな人、おるんかなー?」

(おらんわ!!そんな笑いながら言う人にはおらんわ!)…とつい心中激しくツッコんでしまった。多分乗ってた人全員がツッコンんだ筈。