JAM

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?のJAMのレビュー・感想・評価

3.4
この映画はリドルストーリーです。

二人ぼっちのハッピーエンド。
映画版のあのオチが好きなんです。
大好きなんです!
だから、なるべく褒めたいんですよ……たとえ世間一般の意見としては「訳の分からない結末」と言われようとも、自分はなるべく肯定的に評価したいんです。
酷評の割にはいい所あったじゃん、と。
でも、やっぱり褒めるべき点よりも駄目だとはっきり言わないといけない点の方が多いんですよ。
この映画の雰囲気は凄く大好きですし、自分はこの映画が好きだとはっきり言えます。
そんな感じで本編。
予め言っておきますと、あくまでも一本の映画(脚本家の映画ノベライズ版を参考として含む。参考にしたくないんですけれども)としての評価になります。

題名は狙い過ぎて的を外しすぎ。
打ち上げ花火を前面に出した割には、本筋に打ち上げ花火があまり関係ないです。
九十年代のドラマをアニメ映画化するという試みは一周して新しいですね、本作を土台として素晴らしい映画がこれから作られることを信じています。
シナリオ。
「君の名は」と比較されがちな本作ですが、内容はまるで違います。夏公開のアニメ映画だから、時間が関係してるっぽいから、男女の恋愛物だから、それで二つの作品を一緒くたにして見た時,本作はそりゃ低評価にもなろうものです(まぁ、これに限っては宣伝の仕方に問題があったかと………無理に決まってるじゃん。この内容とオチで第二の君の名はなんて無理ですよ)。
端的に言うと、本作の展開やオチはエンターテインメント性よりも文学性を重視しています。
考察や推察,もっと言うならば賛否両論を前提とした終わり方でしょうし、そこから独自の解釈を求めた結果として個々の評価も変わってくるのではないでしょうか。
ですから、あのオチわかんねー。
で、思考を停止するとそれ以上の物は当然得られません。花火だけ作って、打ち上げる事をしないような物です。
けして制作サイドが全てを決めるのではなく、観客に彼らの結末を委ねているのではないでしょうか?
映画としては駄目なんですけれどもねそれ。
仮に良しとしても、君の名はみたいな物を期待して見に行った層からしたら酷く映る事は請け合いです。
まずそういう締めにするんだとしたら、作中に独自の答えに辿り着くべき伏線を含ませるべきで、確かに伏線はあったんでしょうけれども(風車とか)、分かりにくいったらないというのが大多数の本音なのではないでしょうか。
これは個人的に、シャフトだからってのもあるのでは?
と考えます。
あれも演出では?
そう考えてしまっても無理はないんです。
だって、そういう作風ですもんね。
随分と抑えられてはいましたけれど、それでも意味ありげな場面が多くあった事は否定できません。

45分のドラマを90分にするとなると、やはり無理があるようで回想が多め。
しかし、そんな所に時間を使うならもっと登場人物の心情やオチに繋がる伏線を入れるべきだろと苦言を呈さずにはいられません。
そりゃ女の子の誘いだって断るでしょう。
自分の好みではないけれど可愛い女の子が親友といい感じの関係になったら苛苛するでしょう。
そう、思春期だから!
それだけで察するのは、流石に無理でしょう。
説明が足りない!
あまりにも!
なずなの心情はある程度察する事は出来ても、男二人の心情はある程度終盤まで謎のままです。典道くんはともかく、祐介の心情を完全に理解出来たとも思いませんし。
ドラマ版ではどうやら1回だけの'もしも’も三回になっていますが、ここは良かったんじゃないでしょうか。
もしもの世界がいかに広く多いことが分かりますし、なずなと典道くんの会話も見れたのでラストに繋がる二人のあれこれの下地にはまぁなっているのでは。
小学生から中学生に年齢を釣り上げたのも悪くないと思いました。恋愛物として売るには、そっちの方が魅力的でしょうし、なずなの神聖性を高めるという意味でも分かる気がしました。実写ドラマならば小学生で納得ですけれど、アニメとなるとやはりその辺りもネックでしょうからね。幼さが勝っても大人っぽさが勝っても、駄目という。
ただそこで割を食ったのは、ギャグなんですよ。中学生にもなって何してんだよこいつら感は否めません。先生の巨乳ネタはまだしも、うんこて。プールサイドのあのシーンとか説明不足も相まって、マジで頭の空っぽの奴なんじゃねぇか、と。
そして、誰もが思ったであろう「打ち上げ花火が丸か平べったいかなんてスマホで見りゃイイじゃん」。しかし、作中に登場するゲーム機体を鑑みるに時代背景的にはスマホは登場していないのではないでしょうか。
それにしたって、夢がないよなって話なんですけれども。事実がどうこうよりも、ダチで一緒に馬鹿やりながら見に行くから良いんでしょう。夏の終わりを感じさせるようなノスタルジックな雰囲気を纏うこの世界において、そんな物は不要なのです。
ちなみに、ノベライズ版だとスマホが登場してます。
余計な事を!
声優の起用について。
広瀬すずさんは良かったです。中学生にしてかなり妖艶かつ耽美ななずなを見事に演じきっていました。
菅田将暉さんはギリギリ……アウトなんですけれども、登場人物の声優がほとんど本職の方だった為か浮きまくってました。
一概に悪いとは言えないんですけれどもね。だって、十歳そこらの役なんて普通は出来ませんよそりゃ。
話題性重視じゃねぇか、とは言われていますが話題性はそりゃ大事でしょう。そういう意味で見たら、頑張ってるほうですよ彼は。
神木くんが特別なだけですよ!
しかしそうなると、やっぱり声優を起用するべきだったと思わなくはない。話題性は大事ですけれども、一般的な層を狙うなら根本から変えるべき点はありますし、ここまで突き抜けた世界観の映画ならば声優を起用してそっちにターゲットを絞るべきだったんじゃないでしょうか。
花火。
綺麗でした。作画が綺麗とかそういうあれこれを差し引いて、素直にあんな花火がいつか見てみたい。ネタバレになるため、あまり詳細は語れませんが二度目と三度目の花火は今まで見てこなかった花火だったので新鮮でしたね。
スゲーって。CMの馬鹿ーって。
オチ。
個人的には、あくまでも映画版においてのオチはリドルストーリー的なオチだと思っています。
もしもの世界を描いた本作。
一つの終わりを定めて可能性を閉じるよりも、どうとも取れるあの終わり方にする事でもしもという無限の可能性を作り出した。
ここは誰が何と言おうとも褒めたい。
解釈や考察のしがいがあるという物ですし、そこを含めて初めて完成される映画なのだとも思います。
だからこそ、惜しいなぁ、と。
実写版からなずなの台詞が変わっていたのも、きっとこの為なんじゃないかと。
ここばかりは映画で良かった!
あのノベライズのオチよりも断然いい!
知るかあんなオチ!
正直、あのオチだけで自分は結構救われた気持ちになりました。
(僕個人の解釈はコメントの方で)
万人向けはしないでしょうけれど、文学的で好きです!
好きなんですって!
楽曲。
ここは手放しで褒められます。
主題歌も挿入歌も最高でした。
ただ、なずなの瑠璃色の地球!
いい曲ですよ、いい曲なんですよ?
でも、これ他に演出の仕方なかったんですか!?
笑いましたよ、えぇ。
一度目で笑い二度目で「またかよ……」と内心思いましたよ。必要かと言われると微妙な場面ですが、あそこはぶっちゃけ笑いどころでもあるのではないでしょうか。
白馬って。
キャラクター像。
この登場人物は果たして何を考えているのか、それが分かりにくい事は否定できません。なずなの目的は確かに明確ですが、典道と祐介は序盤の時点では「こいつ等は何をどうしたいんだ」と観客自らが考えるしかありません。
ビジュアルは……まぁ、シャフトですよ。
なずなが可愛かったです。
つーか、先生も可愛かったです。
好きな人は好きでしょう。
僕も好きですから。

という訳で、現時点でパッと思いつく限りではこれくらいです。オチの意味をあのまま受け取るとこの映画は「妄想が叶って良かったね、でも現実はそう甘くねぇ」という映画にしかなりえないでしょう。
文学的作品として見れば良作。
映画としては見れば駄作。
そうまとめざるを得ないのが悲しい。
オチや雰囲気は本当に好きなのに。
誰が何と言おうとも、この映画は好きですよ。
何度だって見たいですね。

あー、戻り玉ぶん投げて、もしも打ち上げ花火が大ヒットする世界だったらと願うべきでしょうか。
JAM

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