小

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?の小のレビュー・感想・評価

3.5
この夏の大型アニメ映画で公開前の宣伝が凄かった。我が家ではひさびさのマモ案件(声優の宮野真守さんが吹き替えを務めている作品)で、この映画のために一度予約した旅行日程を変更したくらい。

娘は執念が実り、マモも登壇する舞台挨拶付きの上映会に当選し友達と、私は娘と話をするため一人で鑑賞。

んで、感想ですが…。これって中1男子の主人公、典道の妄想恋愛映画ではないかと。女性の方は全く共感できないのではないかと。

この年代では女子の方が先に大人っぽくなり、男子はまだまだ子供っぽい。下品で汚い系の話題でゲラゲラ笑えるけれど、性に目覚め、女子のことが気になりはじめる年頃。そして「もしも玉」が誘う先は、そんな主人公の妄想世界にしか思えず…。

帰ってきた娘と話をすると「マモ(34歳)が可愛かった」、「マモの台詞が思ったより多くなくて、準主役なのか疑問」と。肝心の内容についてはやはり微妙な感じで「ラストはどういうこと?」という話になり、これは「原作を見よう」とTSUTAYAの在庫を検索して、車で15分くらいの店舗で岩井俊二監督のテレビドラマ版DVDを借りてきた。

これがやっぱり名作。主人公たちは小学6年生なのだけど、純粋さ、男友達との関係、女の子への好意などが入り混じる、微妙で、なんとも言えない感じが良く伝わってくる。そしてヒロインなずなの最後の台詞によって、少年時代の切ないひと夏の思い出みたいな雰囲気が一気に広がり、余韻を残す。

一方、映画の方は、恋愛に振ったことが悪いとは思わないけれど、使いたいと思った素材と、作ろうと思ったもののミスマッチが大きすぎるというか。大げさに言えば、ハンバーガーの材料で、こじゃれたデザートを作ったみたいな。

男女の成長の差という素材に磨きをかけ、特に男子は原作より幼くなった感じなのに、なずなとの関係は一歩も二歩も大人の方に踏み込んでいる。恋愛ものにするならば、男子のガキんちょ感は抑えるべきと思ったけれど、どうだろう。

脚本は原作に寄せていて恋愛ものじゃなかったけれど、やっぱ大ヒットには『君の名は。』的物語でしょ、みたいな感じの注文が製作サイドから入ったのかしらん。この違和感のある内容は、一人の人が一貫して作ったとは思えないんだよね。

ハリウッドのSF映画における「ゼロ・グラビティ効果」じゃないけれど、日本のアニメ大作映画は「君の名は。効果」なのかしら。声優に人気俳優を起用し、技術を駆使したキレイな映像で、耳障りの良い楽曲を繰り返し流して宣伝すれば、投資回収リスクが軽減できるみたいな。

ま、面白ければ「君の名は。効果」でもいいんだけどさ。でも「ゼロ・グラビティ効果」の結果、アメリカのSF大作映画は、ほかのヒット作を模倣した映画だらけになり、必ず客が入るスター俳優がよく起用されるようになったというから…。

本作も『君の名は。』を模倣したと言えなくもないし、吹き替えは『君の名は。』以上の人気俳優に、我らがマモこと声優界の大スター宮野真守(我が家の主観です)だから、同じようなことにならないのか、と。リスクをとり挑戦しなければ革新はない、ということが本作の教訓なのかもしれない。

●物語(50%×2.5):1.25
・酷評するほどではないが、面白くはない。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・マモが出ていて、家では盛り上がったので。

●映像、音、音楽(20%×5.0):1.00
・ここはホメどころ。
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