賽の河原

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?の賽の河原のレビュー・感想・評価

2.7
新学期も始まりまして、高校生にこの映画の感想を色々聞きましたけど、やはり一様に良くないですね。「君の名は。」みたいなのだと思ったら全然違った、みたいな話も多かったです。
とはいえ、私は全然期待していて。だってそうじゃないですか?東宝の夏の映画で、声優は広瀬すずと菅田将暉、脚本は大根仁、新房とシャフトが関わって岩井俊二の原作ですよ?しかもプロデューサーは川村元気。メンツでみたら「いや、これ面白そうだぞ...!」ってなりますよね。
んで公開近づいてきてってタイミングなんですけど、別に私はそんなに積極的にこの映画の情報逐一入れてたわけじゃないんですけど、 「製作が結構ギリギリ」みたいな噂とか、それに伴うアフレコが云々みたいな話聞いて暗雲垂れ込めるじゃないですか。なんだかなー。と思いつつ9月1日の映画の日に観に言ってまいりました。
結論から言えば「まあ、普通にいいんじゃないの?ラストシーン以外は退屈だったけど、ラストシーンはエモい」という感想です。
ラストシーンだけがこの映画の質を担保していて、そこに至るまでは正直特別面白くもないかなという。ループものとして見ると、典道くんが例のもしも玉で藤川球児ばりの火の玉ストレートを投げ込んでくるわけですね。
そりゃ最初1球くらいは真っ直ぐのノビとかキレに驚くわけですけど、例えば大阪桐蔭の根尾なんかは中学で140キロオーバーの球投げてる時代なわけで。何度も何度も典道くんが劇中でボール投げてるの見せられても正直「君の球が速いのは分かったよ。もうどうでもいいよ」って感じになってきますね。
あとやっぱりこの映画が受けない最大の問題点は「全体的にフェチズムとかジョークのピントがあってない」点ですよね。
だって映画の最初から「1日寝かしたカレー、ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか」みたいなクッソくだらなくて笑えないどうしようもないネタですよ?
学校の先生の巨乳ネタとかさ、誰が楽しんでるのか分からないですけどやっぱりあんまし面白いとは思えませんし、実際に絵が巨乳すぎてどうしても「萌え」的なキモヲタ的なフェチズムが滲み出ちゃってるんですよね。
チェーホフは「物語に拳銃が出てきたら、それは発射されなければならない。」なんて言葉残してますけど、その作劇理論で言ったら本作ではやっぱりオッパイ見せてくれないとダメでしょ(錯乱)
とにかく作劇上なんのトリガーやキーにならない構成要素なのにそれがいかにもキモいという点で、中高生が劇場から出てきて「面白かったね〜」とは言えないでしょ。
フェチズムといえばあの中盤の瑠璃色の地球のメルヘンチックな世界はなんなんですかね。いい大人があれを見て「いいねえ」って思わせるのはなかなか難しいんじゃないでしょうか。いささか悪趣味かと思いましたね。
あとこれは、メアリの時にも書きましたけど「ドヤ!作画すげーだろ?」っていうシーンは正直私みたいな素人にはよく分からないんで、そういうのが多すぎても鼻に付くだけだよなあという。例えば水面の上を列車が走るシーンとか、「なんかもう千と千尋でこんなん見たんでいいです」って感じなんだけど、映画は「見て!この細かい作画!ほら!電車の中まで表現がさ!」みたいな感じで、「だからどうした。」としか掛けてあげる言葉が見つからないです。
んで、ラストシーンはとってもエモいとしか言いようのないなんとも言えない快感があったんですけど、それば多分典道くんの童貞的な世界認識と私の憧景とか回顧みたいなものがたまたまハマったというのとあとは音楽じゃないですかね。DAOKOのラストの曲、なんとも言えず切なさが滲み出でいて最高でしたね。ただこの曲このシーンも一般ウケするかというと...すげースイートスポットが小さいと思いますね。
岩井俊二の原作からすると長すぎる映画ですし、大根仁の脚本で言えばなんだか短すぎるような。月並みな言葉で言えば「帯に短し襷に長し」という作品でしたね。
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