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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?のKUBOのレビュー・感想・評価

2.8
評判の悪いのはわかっていて、岩井俊二の作品がどうアニメになってか、どうしても確かめたくて鑑賞。

元々、実写版のあの少女だった奥菜恵をアニメで再現できるわけない、と思っていたのだが、結果、思った通りだった。

オリジナルでは小学校高学年(たぶん)だった設定を中学生に変更。ここが大きい。小学校の男女の感情って、実はまだ恋愛感情ではなかったりする。だから許せるあの奥菜恵の思わせぶりな台詞や無防備な表情が、中学生となると意味が変わってくる。

また、オリジナルではまだ少女だった奥菜恵がエロい芝居をしたわけじゃない。岩井俊二がカメラを通して、少女の中にあるそういう輝きを、そういう風に撮っただけだ。

だがアニメにしてしまうと、作り手が意図した芝居を少女のキャラにさせるわけだから、エロくなる。もちろんそこには広瀬すずの声の存在もあるのだが、絵はあくまで媚びた顔をする。そもそもそこまで微妙な表情を描き出せるほど作画にこだわりがない。これではオリジナルにあった「小学校時代にあった淡い憧憬」といったものは全く感じられなくなってしまっている。

オリジナルは60分、残り30分はアニメ独自の展開だが、ここからは全て蛇足。ファンには広瀬すずの歌う「瑠璃色の地球」もお宝かもしれないが、ただの尺伸ばし。

私は滅多に批判したレヴューは書かないけど、これはないんじゃないかな?

そもそもアニメにした意味ってなんだったんだろう? 岩井俊二の題材だし、広瀬すずとか菅田将暉とか人気者を使ってアニメにしておけば「金になる」と川村元気が立てた企画だろう。アニメ化っていうのは、アニメにした方が素晴らしくなる、アニメで表現したいという欲求から作られるものではないのか? 「アニメにしたら客が入る」では、この程度のものしかできなくて当然だ。

久しぶりに批判めいたレヴューを書いたが、これを見てがっかりした人は岩井俊二のオリジナル版を見てください。そこには彼にしか撮れない独特の世界がありますから。
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