この世界で、ぼくはひとりぼっちじゃなかった。
親元で暮らせない子が共同生活する施設。
シモンは、皆がここに来た理由を聞きたがる。
愛されていないのは、苦しんでいたのは自分だけではなかったと彼はこの施設で知ったのだろう。そして、それはある種の救いにもなったのだろうか。
シモンの額にも、髪で隠されたアリスの顔にも消えない傷が残っており、彼らのここに来るまでの日々の過酷さを物語る。
来客の音がするたびに、「ママ!」とドアに走り出す少女や、今日の気分のお天気ボードは実際の施設でのエピソードから来ている気がする。
欠点があっても、捨てられないのだと。
欠点があるから愛されないのではなかったのだと彼らが納得できる日が早く来て欲しい。
血が繋がった家族でなくても、愛してくれる誰かを彼らみんなが見つけて欲しい。
2022-141