こたつむり

ぼくの名前はズッキーニのこたつむりのレビュー・感想・評価

ぼくの名前はズッキーニ(2016年製作の映画)
3.7
★ 壁の落書きに込められた想い

児童養護施設に預けられた子供たちの物語。
…なのですが、うわぁ。
この作品、観客を信用していますよ。
「あなたの心に届くのは間違いない」と作品全体で言っていますよ。

だから、だらけた態度で観ることは出来ません。真心には真心で返す、それがマナー。本作の想いを出来るだけ見落とさないように(心の中で)背筋を伸ばして臨むことが大切。

そして、其処に何を見出すかは人それぞれ。
子供たちの友情なのか。青々とした恋心なのか。それを見守る大人たちの優しい視線なのか。どれもこれもが“おぼろげな輪郭”で描かれているので、自分からつかみ取る必要があります。

この“物語に自分から触れていく姿勢”。
これがフランス映画の神髄なのでしょうか。
もしかしたら、気高くも“自由”を貴ぶ精神に繋がるのかもしれません(そう考えるとフランスと“アメリカの自由”の相性が悪いことも納得です)。

また、フランス語は柔らかくて心地良いから本作は日本語ではなく原語で触れてもらいたいところ。勿論「ありがとう」でも「サンキュー」でも良いのですが、ピタリとハマるのは「メルシィ」なのです。

まあ、そんなわけで。
クレイアニメの手触りと。
フランス語の耳障りと。
物語の優しくも切ない肌触り。
それを愛でる作品。じわりと心に残るのは間違いないでしょう。

ただ、子供には物足りない可能性があります。
うちの愚息は「え。これで終わりなの?」なんて言っていましたからね。まるで某漫画の主人公のように「これでいい、これがいいんだよ」と返答しましたけれども。

最後にひとつだけ疑問。
本作は家族の在り様を提示しました。それはそれでとても素晴らしいのですが…“淡い恋心”を置いてきぼりにしてしまった気がします。それとも、四六時中キスしているフランスでは“アレ”が正解なのでしょうか…。えー。
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