ちろる

草原に黄色い花を見つけるのちろるのレビュー・感想・評価

草原に黄色い花を見つける(2015年製作の映画)
4.0
こういう瑞々しい瞬間にたくさん出逢えるから、私はベトナム映画が好きだったんだって思いださせてくれる、たまらなく幸せな気持ちになった美しい青春映画。
舞台はいまから40年ほど前のベトナム。
まだ電気も通っていないような原始的な生活を送るベトナムの小さな村のとある兄弟を中心に、もどかしさを感じさせる兄の不器用な初恋模様と、兄弟愛に汚れた私の心は何度も洗われた。
主人公の兄ティエウは賢そうで読書家のインドア系、弟トゥオンは無邪気でロマンチストでしかもコミュニケーション能力も高い。
兄ティエウは恋した幼なじみのムーンと、とある事情でしばらくの間共に過ごすのだが、活発な弟トゥオンと、まだ幼さの残るムーンはすぐに意気投合してしまい、嫉妬の念にかられてとんでもない事をしてしまう・・・
兄弟役の2人もさることながら、ムーン役のタイン・ミーの素朴かつ繊細な演技は観た後も心に残る。
なるべく大人の介入を排除し、子どもたちだけの世界をじっくりと見せる事で、ノスタルジーに浸り、いつかの記憶を思い起こさせてくれるような気がしてじんわり心が温かかった。

不気味な森に伝わる悲しきお姫様の寓話
秘密をかかえた少女の家庭の秘密
記憶の奥底にあった自転車サーカス

ただ、淡々と美しい自然の広がる景色とベトナムの子供達の営みを楽しむだけじゃなくて、大人たちの隠す「何か」に気になりながら過ごすこの村の子どもたちとともにこの村に惹きつけられる作りも秀逸。
タイトルにもある黄色い花がラストに行くにつれて印象的に存在感を見せ、詩的なストーリーに可憐な輝きを与えてくれた。
ちろる

ちろる